>> 「Oracle Industry Connect」レポート(2)はこちら

 オラクルが3月25日、26日の2日間、米国ボストン市内で「インダストリー・コネクト」と称するビジネスイベントを開催した。今回が初の開催となる。

 オラクルの業界別製品とサービスを、エネルギー、小売、金融など主要6テーマに分けて最新情報のプレゼンテーションを行う。参加したのは、オラクル製品のユーザー企業とパートナー企業などで、2日間に訪れる来場者は約1000人を見込んでいる。

 年次イベントの「オラクル・オープン・ワールド」をはじめ、数万人の来場者を集めるイベントを開催しているオラクルとしては、かなり小規模なイベントである。にも関わらず、基調講演には同社のマーク・ハード プレジデントが立ち、各業界別セッションの講演者には、通信企業スプリントのCEOやバンク・オブ・アメリカのCIOなどの大物が名を連ねた。エネルギー、製薬などさまざまな業界のキーパーソンが講演し、2日間で100を超えるセッションが開催される。

 オラクルがこのイベントにこれほど力を入れる理由は、同社が持つ「業界別組織(インダストリー・ビジネス・ユニット)」は他社にない強みであり、今後の成長が期待されている分野であるからだ。その理由を、基調講演でマーク・ハード プレジデントが自ら語った。

「レーザーのようにシャープに」
業界特化型組織を研ぎ澄ます
――マーク・ハード プレジデント

基調講演を行ったマーク・ハード プレジデント Photo:DOL

 ハード氏は、業界精通型の営業・開発体制の必要性について、「クラウド、ソーシャルの進展でITを取り巻く環境は激変した。IT関連の支出は従来は8割程度が企業向け(BtoB)、残りが一般消費者向け(BtoC)だったが、この10年間で個人向けが急速に伸び、いまや企業向けと個人向けは半々の状態になっている。こうした変化のスピードはこれからもっと早くなる。その変化に企業が対応していくには、業界に精通した専門家による開発力とサポートが欠かせない」と語った。

 IT界のトレンドは、業界別特化型のサービスから、広く業界を問わず提供する基盤の提供へと向かっているが、ハード氏の考えはこれと逆行する。むしろ「レーザーのように業界ごとの困難な問題を射抜く力を持ったスペシャリストが求められているのであり、多くの業界別にコンサルタントとエンジニアをそろえているオラクルが強みを発揮する」と胸を張るのだ。なぜか。

 ハード氏は、「進んだ技術は、大抵は特定の業界の大きな企業に革新を起こす形で利用される」とし、むしろ業界に張り付いていたほうがイノベーションの現場を先取りできるという見方を示した。また、業界別に分かれているからこそ、ベンダーが売りたい商品でなく、その業界と企業に最適な規模のITを提案できる点が強みだという。

 さらに、業界別組織でない場合の弊害もあるという。「たとえば世界を地域別に分けて組織を組んでしまうと、それぞれの地域ごとに強い業界や強い企業を選んでセールスを仕掛けなければいけない。業界別の方が顧客に対して誠実な組織になる」(ハード氏)

 地域別では、必ずしもオラクルの強みは生かせないというのがハード氏の主張だ。逆にオラクルがITで強みを持つ業界であれば、顧客企業がどの地域に展開しようとしても最適なソリューションを提供できる。