ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

忘れ去られた「益税」問題
このままでは消費税への信頼が落ちる

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第70回】 2014年4月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

消費税率が8%へと引き上げられたにもかかわらず、従来から言われていた「益税」の問題が、マスコミなどで取り上げられる機会がめっきり少なくなった。しかし「益税」を生む制度は残っており、その金額も増加する。そこで、そうした「益税」を生む制度の適用範囲を縮小していくことが消費税制度の信頼を高めることになる。与党・財務省のさらなる努力を期待したい。

なぜ簡易課税制度で
益税が発生するのか

 「益税」とは消費者から預かった消費税の一部が事業者の手元に残ることを言う。現在「益税」という問題を明確に生じさせているのは、簡易課税税制度免税事業者制度という2つの消費税制度である。

 簡易課税制度というのは、2年前の年間課税売上高が5000万円以下の事業者について適用される制度で、法令で定められた「みなし仕入率」を使って売上税額から仕入税額を計算し、それをもとに消費税額を納税する制度である。

 この制度は、消費税の本則計算に伴う中小事業者の事務負担に配慮する観点から、簡素な方式による納税額の計算を認める趣旨で設けられたもので、業種ごとに「みなし仕入率」が設定されている。

 法令で定められている「みなし仕入率」は、以下のとおりである。

 第1種事業(卸売業)    90%
 第2種事業(小売業)    80%
 第3種事業(製造業等)   70%
 第4種事業(その他)    60%
 第5種事業(サービス業等) 50%

 これに対して、会計検査院から、実際の課税仕入率とのかい離が大きい業種があるとの指摘を受けた。つまり、実際の仕入率に比べて多い割合で「みなし仕入率」が決められており、そこに「益税」が発生している業種があるという指摘である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧