少子化対策財源「国民負担増なし」のトリック、歳出改革先延ばしの“悪知恵”Photo:Anadolu/gettyimages

少子化対策、初年度24年度予算
岸田政権の本質は課題の先送り

 2024年度予算案で岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策(こども未来戦略)」の初年度の対策の中身と財源が決まった。

 対策は、児童手当の所得制限の撤廃や高校生までの支給期間の延長、多子加算について第3子以降3万円、出産・子育て応援交付金などで、児童手当の拡充は今年12月からの実施だが、中身は多岐にわたっている。

 だが問題は、安定財源の確保だ。岸田首相はこれまで「実質的な国民負担増なし」と国会などでさんざん説明してきた。しかし24年度予算案で判断する限り、財源捻出で掲げる歳出改革は不十分で、「国民負担増なし」とはいかないものだ。

 それどころか、「国民負担増はない」という詭弁を強弁するために、企業が行う賃上げ(国民にとって所得増)も勘案したり、診療報酬や介護報酬引き上げのうち医療従事者や介護従事者の処遇改善による負担増は負担とは見なさないなどしたりするなど、役人に悪知恵を出させて本質をごまかした。

 少子化対策が完全実施となる28年度までを見ても、創設する「こども・子育て支援金」などの安定財源確保の確たる見通しは立っていない。防衛力強化のための財源もしかりで、岸田政権は、財源問題や負担増問題などの課題に本気で向き合う姿勢が決定的に欠けている。