日本もお世話になった世界銀行。
その役割と成り立ち

世界銀行の役割は、戦災復興と発展途上国支援です。たとえば日本は、米軍による無差別爆撃で道路・鉄道などのインフラが破壊され、主要な工業地帯も破壊されていました。その再建にかかる費用は、日本政府の支払い能力を超えていました。

 そこで、日本政府は世界銀行に公共事業計画を提出します。世界銀行では計画実現性や収益率を勘案して、融資するかどうかを決定します。日本も西ドイツも、世界銀行の融資を受けて戦災から立ち直りました。

 日本は1953年以降、東海道新幹線、首都高速道路、黒部第4ダムなどの建設に総額8億6000万ドルの融資を世界銀行から受けています。日本がその債務を完済したのは1990年です。

 IMFも世界銀行もアメリカのワシントンDCに本部があり、加盟国が経済規模に応じて出資し、出資額に応じて投票権を持ちます。慣例的にIMF専務理事は欧州人、世界銀行総裁はアメリカ人が選出されますが、最大の出資者はアメリカ政府です。IMFで17%、世界銀行で16%(2012年)。

 したがって親米政権への融資はすぐに認められ、反米政権への融資は行いません。エジプト革命でナセルの親ソ政権が誕生すると、世界銀行はアスワンハイダムへの融資を停止し、エジプトが反発してスエズ運河国有化を宣言し、スエズ戦争に発展しました。北朝鮮やキューバ、イランの革命政権に対して世界銀行が融資をすることはありません。

 日本や西ドイツが融資を受けられたのは、つまりはそういうことです。アメリカの一極支配といわれるものは、単に軍事力だけではないのです。

(次回掲載は、未定です)


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