世界最大の家電メーカーの座に君臨するサムスン電子。2012年に売上高約16.5兆円、営業利益約2.4兆円を記録した巨大企業の主力商品は、どのような仕組みで伸びているのか。
6月16日、全米が熱狂するプロバスケットボールリーグのNBAのプレーオフの試合の合間に、あるテレビコマーシャルが放映された。
人気ラップ歌手のJay-Zが登場すると、最新アルバムの制作シーンの映像が流れて、最後に「サムスン」のロゴが浮かび上がる。
実はこれ、韓国サムスン電子のど派手なキャンペーンの告知だ。サムスンはこの最新アルバム100万枚分をまとめて買い上げ、看板商品のスマートフォン「ギャラクシーS4」の購入者に向けて、アルバム発売日前に無料配信したのである。
米「ウォール・ストリート・ジャーナル」などによると、楽曲の購入費用は500万ドル(5億円)、プロモーション費を含め2000万ドルはかかったと推定される。
これに限らず、サムスンの広告攻勢は凄まじい。日常的にマンハッタン中心部のタイムズスクエアをサムスンの青色のロゴで染め、人気俳優やアスリートも相次いで広告塔に採用している。
同社の年次報告書によると、2012年の広告宣伝費は10兆9421億ウォン(約9830億円)。これは米アップルの約10倍に相当する。売上高の5.4%という比率は家電IT業界でも極めて高い。
なぜ、かくも巨費をかけるのか。その背景を読み解くと、同社の収益構造と今後の課題が見えてくる。
同社の収益構造の推移を振り返ると、大きく変化していることがわかる(図(1))。
2000年代前半、主な収益源は世界一の規模を誇る半導体や液晶パネルなど、デジタル家電の中核部品だった。薄型テレビで世界シェア1位の王座をソニーから奪った06年も、実は営業利益の6割超を半導体事業が上げていたのだ。
転機は、部品事業が赤字に陥った08年秋のリーマンショック後の、スマートフォンの本格普及だ。