生活者同士のコミュニケーションが
主流になった時代

 企業からのメッセージが単純な形では効かなくなっている。2010年代、生活者は、ついに「マス媒体コンテンツの消費者」からも脱却してしまったのである。もちろん、スーパーボウルのCMが毎年ソーシャルメディア上で話題になることや、「天空の城ラピュタ」放映時にTwitterで世界最大瞬間ツイート数を記録した「バルス祭り」に代表されるように、マス媒体のコンテンツは人々のソーシャルコミュニケーションの起点となり得るものだが、もはやそれは、体験の共有によって喜びを得るための、いわば「触媒」となってしまったのかもしれない。

 生活者の興味は、「周りの知人・友人や家族とのコミュニケーション」に急速に移りつつある。実際に広告費はネットに大きくシフトし、視聴時間シェアは年代によってはデジタル媒体が50%を超えている。スマートフォンシフトも起きているが、こうした中で最も伸びているウェブサービスはSNSやコミュニケーションサービス、ついで動画やECだ。

 2013年「メディアデモクラシーの現状」調査によれば、こうした変化は、主要国で日本が最も「遅い」。日本の生活者はもはや先進ではないのだ。そんな日本の生活者だけを対象としている「日本ブランド」と、グローバルブランドとの差は広がる一方になってしまっているのである。日本国内へ向けた視座しか持たない広告代理店任せ、ブランド担当部署任せの「日本ブランド」が、ブランド価値を向上できない理由は、ここにある。

 ブランド価値向上に欠かせないもの、それは経営者自身が、グローバル規模で「ブランドコミュニケーション」という課題に立ち向かうことに他ならない。

コミュニケーションは、B2CからB&Cへ

 では、「日本ブランド」がグローバル規模の「ブランドコミュニケーション」 を実践するために、何を実行すべきか。

「日本ブランド」は<br />“口ベタ”を脱することができるか?<br />――B&C時代のヴァーバルコミュニケーション

 インターブランドは、B2Cから「B&C ―Business & Consumer― 」へ、すなわち、「企業と生活者間に、一方的ではなく相互に対話し関係しあうコンスタントな関係が作られること」が、グローバル規模のブランドコミュニケーション実践のカギであり、この概念を取り入れることが、「日本ブランド」がグローバルブランドと伍して戦う上での最低条件であると考えている。本稿では、こうした概念をどのようにブランディングに取り入れるべきかを概観したい。

<参考文献>
・「日本の広告費2013」 電通
・「メディア定点調査2013」 博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所
・「2014年04月23日ニュースリリース:スマートフォンからのネット利◯者は直近1年間で1100万人増加」 ニールセン株式会社
・「2013年09月26日ニュースリリース:ニールセン、スマートフォンとパソコンからのサービス最新利用動向を分析」 ニールセン株式会社
・「2013年 「メディアデモクラシーの現状」調査 日本版レポート」 デロイト トーマツ コンサルティング株式会社