ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

“動作”が見られるのは習政権二期目か
共産党が“政治改革”に乗り出すための3条件

加藤嘉一
【第32回】 2014年7月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

民主主義の3要素は
各国家間で共有されるべき

 現在、スモッグに覆われた北京の一角でこの原稿を書いている。

 『中国民主化研究』を執筆しながら、時に思うことがある。

 歴史上、中国が“民主化”を達成したことはかつてない。言うまでもなく、ここで言及する“民主化”とは西側諸国を中心に多くの地域・国家が紆余曲折を経ながら実現してきた、自由民主主義という価値観に立脚した政治体制を指す。

 この話を中国の有識者にすると、往々にして「西側の民主主義だけがすべてではない。世界にはいろんな民主主義がある。日本や北欧の民主主義だって、米国の民主主義とは異なるではないか」といった類の反論が返ってくる。

 ナショナリズムのなせる技なのだろうか。

 確かに世の中にはさまざまな民主主義のカタチがあっていいだろう。それぞれの地域にはそれぞれの歴史があり、それぞれの国家にはそれぞれの国情がある。十人十色の状態こそ健全なのだと私も思う。多様性を尊重する文化は地球レベルで育んでいかなければならない。

 しかしながら、“人類社会と普遍的価値観”という観点からすれば、ボトムラインとしての要素は各地域、各国家で共有されるべきではなかろうか。さもなければ、議論にならないし、目標も共有できない。

 ①公正な選挙、②司法の独立、③言論の自由、この3要素が制度的に保証されていることがボトムラインだ。

 民主主義にも色々あっていい。しかし、この3要素が保証されていない国家・社会はお世辞にも“民主的”とは言えない。

 民主主義とて万能薬ではないし、発展の過程で挫折も後退もする。だからこそ、各地域・各国家はこの3要素を徹底し、実践していく過程において、民主主義を充実させる努力を怠るべきではない。米国も、日本も、北欧も、である。特に、民主主義の普及と確立が比較的に遅れている東アジアにおいては、地域内国家間で民主主義をめぐる議論を促進し、問題点を適宜改善していく姿勢が求められる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

⇒バックナンバー一覧