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経営参謀
【第5回】 2014年8月1日
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稲田将人 [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

第1章
高山の集客アイデア、風船大作戦!

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高山は、ニューヨークの大学でファッションを学び、帰国したばかりの中丸美香を夏希常務から紹介される。『ハニーディップ』の商品企画メンバーとして新たに加わるという。2人は早速、千葉ショッピングセンター店に視察に行く。店頭でお客の行動を観察をしていた高山は、ある販促策を思いつく――。若き参謀、高山昇の奮闘ぶりを描く『経営参謀』が6月27日に発売になりました。本連載では、同書のプロローグと第1章を5回に分けてご紹介します。

助っ人登場

 翌日、高山がインスタットビルに出勤すると、いつもの満面笑顔の夏希常務が高山の席にやってきた。

 「高山くん、あなたの助っ人がひとり増えることになったわよ」

 「はあ? ぼくの助っ人ですか」

 夏希常務の後ろを見ると、小柄でそばかすの丸顔に、眼鏡をかけた女の子が立っていた。

 「中丸美香さんよ。ニューヨークのファッション工科大学、FITに留学していて帰国したばかりなの」

 ニューヨークにあるFIT(Fashion Institute of Technology)のことは、高山も聞いたことがあった。有名ブランドのデザイナーも数多く輩出している世界トップレベルのファッションに関する教育機関だ。

 いいなあ、海外で勉強できて。 高山も以前から海外で学ぶことにあこがれを感じていた。

 「高山です。よろしくお願いします」高山は軽く頭を下げた。

 その様子をじっと見ていた中丸美香は高山の服装を見て、いきなり高い声で早口にしゃべり始めた。

 「君さあ、ファッションのこと、あんまり知らないでしょ?」

 「はあ?」

 不躾な物言いに戸惑う高山に、夏希常務は「この子はね、しばらく英語圏で過ごしていたから、Youをそのまま直訳して、『君』って言っちゃうのよ。気にしなくていいから」と言った。

 夏希常務よりも高い声を出して、中丸も「うふふ」と笑った。

 「だって君のパンツ、いけてないもん。微妙に太いしさ。それに、そのダンガリーもねえ…」

 言われて高山は気が付いた。今はいているチノパンは、前の会社の時に社内向けの在庫処分販売で買ったものだった。しかし、はく機会も少ないために傷みもせず、ずっと買い替えていなかった。結果、今風の細身のものではなかった。

 「タック付きではないだけ、まだましかな。いひひ…」

 中丸は、さらに高山をいじった。

 「中丸さんには、『ハニーディップ』の商品企画をしてもらおうと思っているの。高山さん、これから中丸さんと一緒に売り場に行って、案内してきてくれる?」

 「わかりました」

 「君、よろしくね」

 中丸は明るく屈託のない表情で、パンと高山の肩を叩いた。

 「さあ、行こう」

 さっさと早足で歩いていく中丸のあとにつき、高山もオフィスを出た。

 「君さあ、新業態を成功させたことがあるんだってね?」

 千葉ショッピングセンターに向かう電車の中で、中丸が話しかけてきた。

 「ええ、すごく短期間で立ち上げたけど、幸いうまくいきました。市場調査のデータから、いろいろと分析していたら、ニーズが見えてきて」

 ふーん、と聞いていた中丸は、「あたしもね、マーケティングのクラスをとったことがあるんだ。だから、そういう事例にはすごく興味があるの」と言った。

 「ぼくは、マーケティングをきちっと学校で勉強したことはないけど…。中丸さん、自分でお金を貯めて留学したの?」

 「半分は自分の貯金で、残りの半分は親に借りたの。毎年150万円ずつ返すんだ」

 親に半分借りるのか、そういうやり方もあるな、留学に現実味を感じていなかった高山にとって、中丸の話は、あこがれを身近なものに感じさせた。

 「田村社長はね、あたしの伯父にあたるの。夏希さんと同じ、姪っ子なんだ。歳はだいぶ離れているけどね、うふふ…」

 なるほど、この子も一族なんだと、高山は知った。

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稲田将人(いなだ・まさと)  [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

早稲田大学大学院理工学研究科修了。豊田自動織機製作所よりの企業派遣で米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科にて修士号を取得した後、マッキンゼーアンドカンパニーに入社。マッキンゼー時代は、大手電気企業、大手建設業、大手流通企業などの戦略策定や経営改革などに携わる。その後は、企業側の依頼により、大手企業の代表取締役社長、役員、事業・営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行う。これまで経営改革に携わったおもな企業には、アオキインターナショナル(現Aoki HD)、ワールド、ロック・フィールド、日本コカ・コーラ、三城、卑弥呼などがある。2008年8月に(株)RE-Engineering Partnersを設立。成長軌道入れのための企業変革を外部スタッフや役員などの役目で請け負う。戦略構築、しくみづくりにとどまらず、社内に機動的な参謀チーム、改革スタッフを養成し、企業が永続的に発展するための社内の習慣づけ、文化づくりを行い、事業の着実な成長軌道入れまでを行えるのが強み。


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レディースブランドを複数展開するグローバルモード社に転職した高山昇は、同社の田村社長から低迷するブランドを「半年間で立て直してほしい」と依頼される。しかし、いざ現場に配属されてみると、思うように周囲の協力が得られない。そんなある日、高山が思いついた集客アイデアが功を奏し、売上が急上昇。周囲の高山を見る目がガラリと変わり、改革が動き始める。持ち前の行動力とひたむきさを武器に、社内の地雷を踏みまくりながらも事業のV字回復に取り組む主人公の姿を通して、経営参謀のあるべき姿をリアルに描く。

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