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経営参謀
【第4回】 2014年7月30日
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稲田将人 [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

第1章
商売繁盛のサイクル

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高山は、『しきがわ』時代に世話になった経営コンサルタントの安部野の事務所を訪れ、社長から許可をもらった市場調査について協力を依頼する。しかし、予想外にも安部野に断られ途方に暮れる。そんな高山を見て、安部野はあるマーケティングの話を語り始める――。若き参謀、高山昇の奮闘ぶりを描く『経営参謀』が6月27日に発売になりました。本連載では、同書のプロローグと第1章を5回に分けてご紹介します。

安部野との再会

 高山はJR荻窪駅の改札を出て、南にある住宅街に向かって歩いていた。

 時折、肌寒い風も吹くものの、ジャケットで十分な心地いい天気の中を10分ほど歩き、昭和の時代に作られたのであろう鉄筋コンクリートの巨大な民家のような建物の区画を回り込み、大きな鉄製の門の前に着いた。

 脇にある小さな通用口のインターホンのボタンを押し、しばらく待つと「はい」という男の声が返ってきた。名前を名乗るとロックが外れる音がして、高山は通用口から中に入った。

 建物のドアの鍵は開いており、そのまま玄関口に入ると、奥から「中に入ってくれ」という声が響いてきた。高山は靴を脱ぎ、天井は高いがなぜか薄暗いエントランスを通り、中に入って行った。

 高山が入ったいかにも昭和の来客用応接室には、その時代の応接セットがあり、黒いジャケットを着た髪の長い細身の男が座っていた。

 「安部野さん、お久しぶりです」

 「ああ…」

 高山の呼びかけに男は顔を上げずに、足を組んだまま、しかめっ面でA3の資料をにらみつけていた。

 高山は勝手に男の対面に座った。

 「急に押しかけてすみません。忙しそうですね」

 男は不機嫌そうに顔を上げ、「別にいつもと同じだ」と言って資料をテーブルに投げた。

 「『しきがわ』を辞めたんだって? それで今は何をしている?」

 「先日、グローバルモードに就職しました」

 「ほう、今度はレディースか。それはまた大変だな」

 男の名は安部野京介。50代前半に見えるが年齢不詳。

 高山の前の勤務先『しきがわ』の経営企画室長、伊奈木耕太郎とは旧知の仲で、次から次へと出てくる経営の難題へのアドバイスを行い、高山が難局を切り抜ける手助けをし、最後は『しきがわ』のトップの、思い込みという「憑き物」も落とした経営コンサルタントだった。

 「はい。レディースブランドを立て直すことになりました。半年で…」

 高山が言うと、安部野は手にしていた資料を置いて高山をまじまじと見た。

 「半年とは、またえらく安請け合いしたものだな」

 「えっ、そうですか?」

 「当たり前だ。メンズよりレディースのほうが難易度は高い。ただし市場は大きいし、粗利幅も一般的には大きいので当てていければ爆発力もあり、得られるものは限りなく大きいがな」

 安部野は、髪をかき上げた。

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稲田将人(いなだ・まさと)  [株式会社RE-Engineering Partners代表、経営コンサルタント]

早稲田大学大学院理工学研究科修了。豊田自動織機製作所よりの企業派遣で米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科にて修士号を取得した後、マッキンゼーアンドカンパニーに入社。マッキンゼー時代は、大手電気企業、大手建設業、大手流通企業などの戦略策定や経営改革などに携わる。その後は、企業側の依頼により、大手企業の代表取締役社長、役員、事業・営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行う。これまで経営改革に携わったおもな企業には、アオキインターナショナル(現Aoki HD)、ワールド、ロック・フィールド、日本コカ・コーラ、三城、卑弥呼などがある。2008年8月に(株)RE-Engineering Partnersを設立。成長軌道入れのための企業変革を外部スタッフや役員などの役目で請け負う。戦略構築、しくみづくりにとどまらず、社内に機動的な参謀チーム、改革スタッフを養成し、企業が永続的に発展するための社内の習慣づけ、文化づくりを行い、事業の着実な成長軌道入れまでを行えるのが強み。


経営参謀

レディースブランドを複数展開するグローバルモード社に転職した高山昇は、同社の田村社長から低迷するブランドを「半年間で立て直してほしい」と依頼される。しかし、いざ現場に配属されてみると、思うように周囲の協力が得られない。そんなある日、高山が思いついた集客アイデアが功を奏し、売上が急上昇。周囲の高山を見る目がガラリと変わり、改革が動き始める。持ち前の行動力とひたむきさを武器に、社内の地雷を踏みまくりながらも事業のV字回復に取り組む主人公の姿を通して、経営参謀のあるべき姿をリアルに描く。

「経営参謀」

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