経営 × オフィス

「鶴の恩返し」の機織り部屋を廃止する!
本社至上主義から脱却するための単純な処方箋

山口 博
【第4回】 2014年7月29日
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昔話「鶴の恩返し」の鶴(おつう)が、「決して見てはなりませぬ」と言った機織り部屋。特に外資系のグローバル本社の下にぶら下がる日本法人には、グローバル本社の方針を日本風にアレンジするなどもってのほか、方針を見ることすら許されぬといった極端な運用が、いまだにまかり通っている。

 「グローバル本社トレーニングプログラムの資料は、人材開発課長の席の後ろのキャビネットの中に収納されています。しかし、人事本部長といえども、いえ、社長といえども、そのトレーニングプログラムに生徒として参加するまでは、その資料を1ページたりとも見てはなりません」――。

 製造業T社へ、人事本部長として着任し、前任者と引き継ぎをしている時のことだ。人事トレーニングプログラムの資料はどこにあるかと問うた時の、前任者のリアクションを決して忘れることができない。

 昔話「鶴の恩返し」の鶴が「決して見てはなりませぬ」と言った機織り部屋を思い浮かべ、あきれて二の句を告げなかった。半年前に入社した人材開発課長は、その掟に従い、自分がトレーニングに一参加者として参加する半年後まで、トレーニング資料を一切見ることなく過ごしたという。

 それだけではない。「当社では、グローバル本社のトレーニングプログラムは、グローバル本社が認めた翻訳家の訳を、一言一句、現地で変えてはなりません」という。

本社至上主義の人事部が
勝手に掟を作り出す

 私は即座にアジアパシフィックのトレーニング責任者へ連絡をとり、「まさか、そのようなルールはないだろうね」と正した。予想通り答えは、「そのようなものがあるはずがない」というものだった。前任者は、よく言えば素直な、しかし私の言葉で言えば、本社至上主義であった。そして、彼が掟だと思い込んでいたものは、本社至上主義が高じて、いつしか勝手に作り上げられてしまった幻想に過ぎなかったのだ。

 私は、直ちに機織り部屋のキャビネットの封印を解き、全てのグローバル本社提供のトレーニングプログラムに目を通し、グローバル本社プログラムの骨子に沿いながら、日本法人の事例と話法を取り入れた混合プログラムを作り上げ、翌月から展開し始めた。案の定、ユーザであるビジネス部門からは歓迎された。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


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