1兆3400億円──。ソニーが過去6年間、テレビやパソコンをはじめとする「本業」のエレクトロニクス事業で積み上げた、実質営業赤字の累計額だ。
途方もない累積赤字を前にして、事業の再構築が急務なことは火を見るより明らかだが、「構造改革」を叫ぶソニーの現状からは、その終わりがいまだに見えてこない。
7月末に公表した、2014年4〜6月期のエレキ事業の営業損益は68億円の黒字。ただしそこには、4月に手放した「御殿山テクノロジーセンター」の一部ビルや土地の売却益148億円が含まれている(ソニーは不動産の売却益を本業の儲けを表す営業利益として計上している)。それらを除くと、実質の損益は80億円の赤字だった。
「赤字構造をまだ転換できていない」(吉田憲一郎・最高財務責任者[CFO])という苦しい状況で、今年7月、ソニーは10年間赤字を垂れ流し続けたテレビ事業を分社化。「VAIO」ブランドで展開していたパソコン事業は、日本産業パートナーズに売却するなど対策を順次進めているものの、ここにきて、構造改革をスピードダウンさせかねない新たな不安要素がまたぞろ出てきた。
それは、スマートフォンを中心としたモバイルコミュニケーション事業だ。