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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

3Dプリンタの進化と普及は
日本がイノベーションを起こすビッグチャンス!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第2回】 2014年8月18日
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産業用から家庭用まで、
さまざまな分野で実用化

3Dプリンタの造形精度は日々進化している。初期のもの(上の白)と比べ、最新機種(下の黒)の精度の高さは一目瞭然だ

 月での住宅建設はまだ先の話になるでしょうが、3Dプリンタの技術は、すでにさまざまな分野で実用化されています。

 航空機では補修用パーツから始まり、新機種の部品にまで広がっています。米ボーイング社は1997年に米マクドネル・ダグラス社を買収し、旅客機「MD-80」を引き継ぎました。トイレのパーツは壊れやすいのですが、詳細な図面がありません。そのため、古いパーツの形を3Dスキャナで読み取り、3Dプリンタで補修パーツを製造しています。同じくダクラス社が開発した戦闘機「F-18」では、補修に使われる90のパーツが3Dプリンタによるものです。

 さらに、最新鋭の「F-35」ステルス戦闘機では、開発段階から900以上のパーツが3Dプリンタで製造されるようになったといわれています。

 医療現場でも、歯科で使われる矯正用マウスピースや、さまざまな臓器、骨、ギブスなどが3Dプリンタでつくられています。

 たとえば、CTスキャンで撮った画像情報を基に、内側の構造や血管の位置まで忠実に再現した心臓の模型をつくることも可能。ウェットな質感や感触も再現できます。私は医学部で手術を経験しましたが、こうした正確な模型は手術前の予行練習にも非常に役立ちます。

 複雑な形をした耳も簡単に複製でき、人間の耳よりも精度が良いという実験データもあります。

 こうした業務用の3Dプリンタは高価ですが、冒頭で述べたように家電量販店が扱う家庭用3Dプリンタなら20万円程度で購入できます。自称“超オタク”の私も、主要機種4台を購入済み。いろいろなモノをつくって遊んでいますが、わずか数年前に比べて格段に精度が向上し、価格も下がっています。

パーティでのワインがもったいない!
3Dプリンタで解決できる!?

筆者がワイングラスの3DデータをダウンロードしたWebサイト

 先日は、名前入りのワイングラスをつくってみました。私は自宅に友人を招いてワインパーティをよく開くのですが、このとき気になっていたのが多くのワインがムダになってもったいないこと。というのは、談笑しているときにワイングラスをテーブルに置き、結局、自分のグラスがどれかわからなくなって、新しいグラスにワインを注ぐということが繰り返されるからです。

 名前入りのグラスならワインをムダにしなくてすみます。素材はガラスではありませんが、透明でなかなか高級感があり、友人たちにも好評です。

 現在では、3Dデータをアップロードできるサイトや、3Dデータをプリンティングしてくれるサイトなど、無料・有料を含め、さまざまなサービスが登場しています。前述のワイングラスも、私がそうしたサイトからデータをダウンロードして3Dプリントしました。

 冷蔵庫や空調機など、特定の家電製品のパーツの3Dデータが購入できるサイトもあります。壊れたパーツの3Dデータを購入し、自宅の3Dプリンタで復元すれば、すぐに修理できます。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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