経営 × オフィス

雇用問題を増長した人事部門の無策(上)
キャリア開発の視点を損なったオトモダチ異動の罪
「私は専務のマンションを購入して常務になりました」

山口 博
【第6回】 2014年8月26日
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 大手金融機関F社の中枢である営業管理部。この営業管理部では、毎日昼に必ず見られる光景がある。担当の宮田常務が昼食を終えて常務室に戻ると、取締役、部長、課長ら管理職が次々と集まり、決まって同じヤクルトの蕃爽麗茶のパックを飲みながら、常務室のソファで歓談をするのである。

 営業管理部の管理職は、しばしば、夕方から誰もいなくなることでも有名だった。本社から社用車で1時間かかる常務の自宅近くのスナックに、全管理職が集まるからだ。そのスナックには、直前まで宮田常務が所管していた人事部の面々の顔も見える。

「オトモダチ」にならなければ、出世できない
日本企業に巣食うオヤジたちの仲良しクラブ

 そう、宮田常務派閥の会合である。私的な派閥会合としてのけじめはつけており、費用は一切常務のポケットマネーから出ている。1人、何度誘われても、一切このスナックへ行かなかった課長がいた。この課長は、ほどなくして、地方オフィスへ異動となった。以来、欠席者は出ない。

 常に宮田常務のかばん持ちを務め、真っ先にスナックへ出向いていた布川部付部長は、その後、宮田常務の自家用車セルシオを譲り受けて購入し、とんとん拍子で昇格し、最後は専務にまで昇りつめた。人事部長は、宮田常務の上司だった専務の世田谷区のマンションを譲り受け、その後、常務に昇格している。

 私が初めてこのスナックへ誘われた時、人事部長にやんわりと、「(「派閥メンバーがいつも集まるのではなく」という言葉を飲み込んで、しかしそういう意味を込めて)人事部としては、営業管理部だけでなく、さまざまなネットワークを広く築くことが重要ですよね」と問いかけた。私の真意を察知した人事部長は笑いながら、しかしメガネの奥の目をキラリと睨ませ、「山口くん、オトモダチだよ!オトモダチ!ボクたちと、オトモダチにならなきゃ!」と答えた。私が、社外でキャリアを築くことを真剣に考え始めた瞬間だった。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


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