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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

“おもてなしの国”のはずなのに
世界で勝てるシステムは、なぜ出てこないのか?

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第3回】 2014年9月29日
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「おもてなしのIT化」は
世界で通用する強力な武器になる!

 海外企業に格好の例があります。

 たとえば、ボーイングでは開発チームに修理担当者も参加しています。運航にはメンテナンスが不可欠なため、機体がどういう構造であれば修理しやすいかという視点も、設計の重要なポイントになるからです。いくら最新鋭の飛行機でも修理に時間がかかれば航空会社は買わないでしょう。

 またマイクロソフトでは、開発チームにエンジニアだけでなくテスターも加わっています。さらに、一般の人に操作してもらい、使い勝手を確認。ウィンドウズで主要な機能の8割が2回のクリックで操作できるようになったのも、その成果だとされています。

 一方、自動車の開発でも中心となりつつあるのは、デザイナーやエンジニアではなく心理学者です。ユーザーの乗り心地や運転のしやすさ、事故を起こさせない操作性などをメンタルな視点から検討し、製品に反映させています。

 とくに自動車は今後IT化が急速に進み、システム製品になるでしょう。そうなれば、パーツのすり合わせ技術で優位に立ってきた日本車メーカーの立場は苦しくなるでしょう。トヨタやホンダが今の地位をキープするには戦略の転換が必要です。

 いまや製品開発は、従来の技術者だけのチームから、より多様なメンバーによるチームに変わってきています。

 ただし、そのメンバーが日本の組織にありがちなイエスマンばかりではダメ。多様な価値観を持つ人たちが意見を言い合い、自由に議論できるチームでなければ意味がありません。

 そこから生まれた「システムシンキング」に、日本の美徳である“おもてなしの心”が加われば、より魅力的な製品やサービスが誕生するはず。おもてなしの心をIT化する「デジタルおもてなし」が実現すれば、それは日本ならではの産物。世界で通用する強力な武器になるでしょう。

※ご意見・ご感想は、齋藤ウィリアム浩幸氏のツイッター @whsaito まで。

(構成/河合起季)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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