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あの日立製作所の「年功賃金廃止」について

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第349回】 2014年10月8日
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企業人事の先頭ランナー
日立製作所の「年功賃金廃止」

 読者は、日立製作所という会社にどのようなイメージをお持ちだろうか。筆者は、良くも悪くも日本的で家族主義的な会社だというイメージを長らく持っていた。電機業界なので、率直に言って賃金水準はそう高くないが、年金をはじめとする福利厚生が手厚く、社員は会社の傘の下で真面目に働いてさえいれば、堅実で不安のない生活が送れるイメージの会社だった。

 管理職に一定以上のTOEICの点数を求めるなど、近年、国際化を意識した動きを見せてきた同社だったが、今回の管理職の年功賃金を廃止するという発表には、正直なところ驚いた。「日本の企業もここまで来たのか」という感慨を覚える。

 日立は、もともと人事政策に熱心な会社であり、日本企業の人事制度の先頭ランナー的な役割をしばしば果たす会社だった。たとえば企業年金では、厚生年金基金の充実に務め、運用にも熱心だったし、運用が努力では上手く行かないことがわかると、代行返上、さらに確定拠出年金の導入などの手を打ってきた。そして、その後多くの企業が追随した。

 今回の年功賃金の廃止も、同業他社ではパナソニックやソニーなどが追随する見通しを報じられているが、異業種も含めて多くの会社が追随することになるだろう。今回の日立の人事制度変更は、後から日本企業の人事制度全体にとって、エポックメイキングな出来事として振り返られることになりそうだ。

 付け加えると、日立製作所は前期決算で史上最高益を更新するなど、業績的には絶好調だ。日立に限らず、日本企業ではこれまでこの種の制度変更は、業績が不調の際にやむなく実施されるのが常だった点でも、今回の人事制度変更には驚きがある。

 それだけ切迫した必然性があった、ということだろう。

 日立製作所の管理職の年功賃金の廃止の背景を、同社の国際化と結びつけて説明する報道が多かったが、国際化ということと賃金に年功要素がなくなって個々人に対して個別化することとの間には、それほど強い必然性は感じられない。より重要なファクターは、人材の流動化だろう。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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