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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

投資銀行の暴走はなぜ止められなかったのか?―ガバナンスの視点から

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第27回】 2009年6月12日
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 コーポレートガバナンスの授業が面白い。株主対経営者という観点で語られることの多いテーマであるが、そもそも「ガバナンス=まっとうな企業統治」という視点に立つと、株主以外にもガバナンスの関与者がたくさん存在することが見えてくる。

株主と経営者の利害は
一致していた投資銀行経営

 たとえば、金融不況の諸悪の根源であるように語られる投資銀行に関して、そのガバナンス上どこにどんな問題があったのかを考えてみると、それはいわゆる株主と経営者間の利害の不一致という典型的なガバナンス論とは違った側面が見えてくる。

 投資銀行の株価は金融不況が始まる少し前までは堅調に推移しており、リーマン・ブラザーズのCEOであったファルド氏は、2006年にはInstitutional Investors誌から最高のアメリカのCEOに選ばれたこともあった。投資銀行の経営スタイルに関して、株主は極めてハッピーであったのである。ここには一般的に言われる株主と経営者の間での利害不一致やガバナンス上の問題は見えない。

 今振り返ると、当時の状況下必要だったガバナンス上の施策はリスク管理、リスク資産の圧縮であったと思われるが、リスクを取れば儲かるという当時の状況下において、株主にそのモニタリングの役目を期待するのは無理だったであろう。むしろ株主からの強いプレッシャーによって投資銀行がより収益至上主義的な行動に走ったと考えるほうが自然である。

投資銀行のビジネスモデルは
なぜ変貌してしまったのか?

 投資銀行の役割とは、まず企業に対して、M&Aのアドバイザリー、最適資金調達手段の提供などを通じて企業価値向上のための施策を企業に提案し実行することである。そして、投資家に対しては、余裕資金の最適な運用機会の提供を行う。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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