<ひきこもりの方へ。あなたの部屋を見せてください。> 

 そんなブログの呼びかけが、ネット上で話題になっている。

<美術家をしています。まだまだ売れていませんが。僕は以前、 ひきこもり をしていたことがあります。まずその経緯を聞いてください>

 ブログの発信者は、自らも「ほぼ寝たきり」の引きこもり経験がある、美術家の渡辺篤さん(36歳)。

 12月7日から、個展『止まった部屋 動き出した家』を開くにあたり、当時の自分の部屋を写真で公開するとともに、同じような状況にある引きこもり当事者に向け、部屋の画像を送ってほしいと呼びかける。

半年間ほぼ寝たきり、靴も履かない
ニコ動では重宝される「絵師」に

 渡辺さんが引きこもったのは、2010年。結婚を考えていた女性に裏切られたことなどがきっかけだった。

 東京芸術大学大学院の美術研究科を修了してから、渋谷の宮下公園に住み込み、ホームレスの支援活動に準ずるような作品制作活動をしていた。そんな社会的排除をなくす運動の中で、渡辺さん自身も「排除された」ことがショックだった。

 10年ほど患っていたうつが原因で大学を2年ほど休学し、抗うつ薬を飲んでいたことや、将来への不安感も増した精神的ストレスが重なって、家にいる時間が長くなり、徐々に引きこもった。

 実家の自室で6ヵ月余り、ほぼ寝たきり生活をしながら引きこもり始めたのは、2010年7月の海の日だった。その間、一度も靴を履かず、空の色も見ることもなかった。

 まったく靴を履かなかった半年間、渡辺さんは、明け方の4時から6時頃にかけ、親が寝ているのを見計らって、台所へ「食」を漁りに行った。