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出口治明の提言:日本の優先順位

来たるべき衆院選は何が争点なのか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第131回】 2014年11月19日
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 安倍首相は、2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2017年4月まで延期するとともに、衆議院を21日に解散し、「12月2日公示・14日投開票」の日程で、総選挙を行う方針を表明した。前回に続く師走選挙となるが、今回の総選挙は何が争点になるのだろうか。

2年半前の
3党合意という政治遺産

 先ず、今回に至る背景を概観しておこう。2012年3月30日に野田内閣は消費税増税法案等を国会に提出したが、3党(民主党、自由民主党、公明党)が修正協議を行い、6月21日に3党の幹事長会談で、3党合意を確約する3党確認書が作成されて、関連8法案すべてが成立した。これは「政権交代しても増税が揺るがぬよう、与野党を超えて協力する」(野田毅・自民党税制調査会長)という精神に基づいて、社会保障と税の一体改革の実現を目指したものであった。

 けだし、いずれの政権も不人気な消費増税を決め切れなかった経緯があり、どの党も単独では消費増税を正面から掲げて戦う状況にはなかったので、3党でしっかりと合意したという点に大きな意味があった。3党合意によって増税は2段階(先ず8%、次いで10%)で行われることが決まったが、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」という、いわゆる景気弾力条項(附則18条)が織り込まれた。

 今回、7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が年率換算マイナス1.6%となったことから、首相は、景気弾力条項に基づいて、来年10月からの引き上げを「停止」する判断を固めたと報道されている。このGDP速報値が出された後に開かれた「今後の経済財政動向等についての点検会合」では、有識者10人中8人が予定通りの増税に賛成しており、次のような意見が出されている。

① 雇用、企業収益は順調で腰折れリスクは小さい。構造的な失速要因が無い限り予定通り増税すべき。今年4 月の引き上げによる消費・住宅関連支出の反動減で景気は中だるみ状態。しかし雇用環境が悪化するほどの景気停滞ではない。
② 消費税増税後の個人消費が弱いのも事実であり、追加金融緩和に加え、補正予算・賃上げは必須である。「ローカルアベノミクス」(地方創生)の推進による雇用の質の向上、短期的には低所得者対策(所得補てん施策、子育て支援、教育・訓練支援、最低賃金引き上げ等)が重要。
③ 巨額の財政赤字を抱え、主要国で最悪の政府債務水準。株価も高水準で景気も底堅い状況において、消費税率引き上げを先延ばしすることは、内外の投資家に対して「日本政府は財政再建を遂行できない」という強い印象を与える。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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