「上海風力エネルギー展」「上海太陽光発電展」「上海建築省エネ技術・設備展」――。上海では、今年12月だけでも省エネ・環境をテーマにしたこれら複数の展示会が組まれていた。中国全土、毎週のようにどこかで開催されているこの手の展示会は枚挙にいとまがない。
広い会場に密集する出展者、鵜の目鷹の目の来場者、それらを見るだけでも、中国で今どれだけ省エネ・環境がブームなのかは察しがつく。
経済発展一辺倒だった中国が、省エネ・環境の強制的実行を掲げるようになったのは第11次5カ年計画(06~10年)からだ。ここで初めて目標値を示し、GDP当たりのエネルギー消費量を20%引き下げ、主な汚染物排出総量を10%減らすなどの公約を掲げた。目標値達成についても、今年9月27日、国家発展改革委員会副主任の解振華氏が記者会見で「目覚ましい効果を獲得している」と発言したように、期間内の達成は堅いと見られている。
どん欲に省エネ・環境技術を呑み込もうとする中国は、省エネ・環境技術に強い日本にとっても渡りに船だ。中国外交のキーワードに「省エネ・環境」を掲げる日本政府、その波に乗りビジネスチャンスを拡大しようとする民間企業、ともに「戦略的互恵関係」の糸をたぐり寄せようと動いている。
協力案件数は増えても
ビジネスになっていない現実
すでに二国間での政府主導の協力は始まっている。経済産業省が、中国国家発展改革委員会、商務部と共催で行う官民合同の「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」もその1つ。日中両国が官民一体となって中国での省エネ・環境改善に取り組むもので、第4回を迎える今年も、去年と同様に両国から1000人規模の参加者を集めた。
日中両国間の民間ベースの協力案件として06年は5件、07年は10件、08年は19件、そして09年は42件が調印にこぎつけた。が、それらがビジネスになっているとは限らない。「単に補助金を得るためという動機も見られる」「すでに進行している既存の事業をむりやり調印に引っかけているのか」などの指摘が、経産省内部やシンクタンクからも聞こえてくる。
とりあえずの実績作り、そんな側面も伺える。中国の李克強副総理も出てくる場だ。これには中国側の焦りもあるだろう。中国側の役人に課せられているのは、前回よりも明らかに調印実績を増やすことだ。拙速に実績を出そうとするあまり、調印そのものが目的となってしまっている可能性は高い。