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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国が香港「占中」対策で貫いた
内圧『傍観』・外圧『強硬』のダブルスタンダード戦略

加藤嘉一
【第41回】 2014年12月16日
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“天安門化”せずに
終わった香港の「占中」

 香港で約75日間続いた「占中」(occupy central)抗議活動が、ひとまず終了したかに見える。

 2017年に香港で開催予定の“普通選挙”が公正、かつ民主的な手続きに基づいていないことに香港の民主派や学生団体が反発し(第36回コラム参照:香港「占中」の“北への波及”を恐れる中国政府 強硬姿勢は真の民主主義と自らの退路をも潰す)、9月末以降、香港政府がある金鐘(アドミラルティ)や旺角(モンコック)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)などで座り込みを続け、時に警察当局と衝突するような場面も見られた。

 12月11~15日にかけて、香港政府はバリケードを強制撤去、デモ隊を強制排除した。警察の動きを察知し、事前に進んで撤去したデモ隊もいれば、最後の最後まで座り込みを続け、自ら警察に連行されることを望んだ学生リーダーもいた。香港警察は、デモ隊にとって最大の拠点だった香港中心部の大通りにあったバリケードを撤去・排除した11日夜までに、デモ参加者209人を公務執行妨害などで逮捕した。

 同じく11日に開かれた定例記者会見にて、中国外交部の洪磊報道官は「占拠は完全に不法な活動だ。香港政府は法に基づいて対処し、香港社会の安定と秩序を回復させる完全な権利を持っている」と、「占中」デモが始まって以来、中国の指導者や政府報道官らが一貫して主張してきた枕詞を静かに語った。

 私の周りには、“平和的”に「占中」デモを終結させた中国政府の対処法に一定の評価を与える見方が、市場関係者を中心に少なくない。

 「今回中国は大人の対応をした。表には出ず、あくまでも傍観者としての立場を貫いた。中国人民解放軍や武装警察も出動せず、天安門事件のような流血事件に至らなかったことは評価できる」(ニューヨークを拠点とする米投資家)

 「香港の民主派たちは0から10を求めている。候補者を選ぶ段階で中国側の意向は反映されるが、そもそも香港は中国の領土なのだから。少なくとも“一人一票”が実現することは0から1への大きなジャンプアップを意味するのに、民主派はそれを自らの手によって潰そうとしている」(香港在住日本人金融マン)

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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