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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国コーヒー市場の潜在力を見抜いた
邱永漢氏の慧眼と出遅れた日本企業

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第240回】 2015年1月15日
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 いまから数えると、7年前のことだ。当時、私は日本のメディアに書いたコラムで、中国の街角で飲むコーヒーの価格の高さを問題として取り上げた。

 「25元(400円)なら普通。35元、40元もざらだ。これまで私が飲んだ一番高いコーヒーは70元(約1100円)だ」と指摘している。レートは当時のものだ。ちなみに、70元では当時、7人分の弁当が買えるほどの金額だった。

 さらに、コラムには次のような説明も書いてある。

 「以上は決して一流ホテルで飲んだものではない。街角にあるごく普通としかいいようのない喫茶店で飲んだものである。70元のときは、ブルーマウンテンだったが、おかわり自由でもなかった。中国では『コーヒーはいかが』という挨拶は安易に口にしてはいけないようだ」

中国でコーヒー栽培を始めた邱永漢さん

 いまや故人となった大先輩の邱永漢さんも、私よりもっと前にこの問題を指摘していた。

 「中国には美味しいケーキ屋やパン屋がない。誰かがそれをやればきっと成功するだろう」

 しかし、私と同じくコーヒーの値段の高さに驚いた邱さんはすぐ行動に移し、雲南省保山でコーヒー栽培事業を始めた。中国経済発展のスピードを見て、やがて中国にコーヒーブームが訪れるだろう、と判断したからだ。雲南省には小粒コーヒーという品種があるが、ブランドにはなっていない。自らの手でそのコーヒーブランドを作りたい、ということを何度も邱さんから聞いたことがある。

 ただ、まさか、雲南省の中でもさらに交通事情が悪い地方に行って、自ら農園作りから始めるとは私は予想していなかった。なぜそこまで苦労してコーヒー事業をはじめなければならないのか、と邱さんに確かめたことがある。愚問だとは自分でもわかっているが、やはり直接聞かないと気が済まなかった。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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