今月4日、テレビアニメ「ドラえもん」でも知られる脚本家の藤本信行氏が亡くなった。このニュースに瞬時に反応したのが中国のドラえもんファンだ。ドラえもんのファンが集まるサイト「どら倶楽部(ドラクラブ)」は訃報を流し、藤本氏の死を悼み、功績を讃えた。

 中国には多くのドラえもんファンが潜在する。統計数字こそないものの、軽く億単位に達する可能性はある。1991年のテレビアニメ放送開始以来、ドラえもんファンは子どもの数だけ増え続けてきたと言っても過言ではないだろう。そこに当時アニメを見て育った世代が加わる。今や「父親、母親」になる大人たちが真剣にドラえもんを追っかけているのだ。

 筆者は数年前、この「どら倶楽部」の中核メンバーと交流したことがある。彼らは昼間サラリーマンをしながら、このクラブを運営していた。しかも、「自分が楽しむために」だ。ドラえもんの秘密道具に魅せられ、自分で作ってしまう“お父さん”もいたが、まさしくそれは「自分のためのおもちゃ」であった。当時の会長さんは「給料の3分の1はドラえもん関連に消費する」といった入れ込みようで、私財をなげうってこのクラブを維持していた。

 中国にはこうしたコアなファンがたくさん存在する。ネット上には、「どらA夢粉絲匯」「机器猫○(○は口偏に巴)」(いずれもファンが集う空間)などのサイトや、秘蔵のコレクションを紹介するサイトなどが無数にある。

「ドラえもん」がつなぐ日中・アジア日本で言う「痛車」!? 愛車にドラえもんステッカーを貼る大人も Photo by Konatsu Himeda

 街では揃いの「ドラえもんTシャツ」で歩くカップルや、ドラえもんのステッカーを貼った愛車を乗り回す中年もいる。新居をドラえもんグッズで飾り立てる新婦もいる。40代男性の財布の中から、「ドラえもん」のキャラクターを印刷した銀行カードが出てくることもある。ひょっとしたら中国には日本よりも強烈なファンがいるのでは?と思わせるほど、「ドラえもん」の露出は目を引くのだ。

 中国はじめ海外で日本アニメの番組普及に取り組んできたアサツーディ・ケイコンテンツ戦略室の伊藤直史さんは「中国人も日本人と同じように『ドラえもん』が持つギャグの面白さや冒険の楽しさ、友情の大切さなどに共感しているのだと思います」と語る。

「ドラえもん」がつなぐ日中・アジア