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辻広雅文 プリズム+one

『鏡の国のアリス』の「赤の女王」が言い当てた日本経済低迷の真相

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第86回】 2009年10月14日
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 「鳩山不況」という文言が、メディアにちらつき始めた。

 世界経済は最悪期を脱したものの、依然として不透明、不安定ななかにある。先進各国ともに、政府の財政支出効果によって経済は維持されている。自律的回復の軌道はまだ見えず、国家によるカンフル剤が途切れれば、再び景気は底に向かうのではないか――そうした恐怖が、世界中で消えない。

 国が経済を支えている事情は、日本も同じである。それなのに、民主党政権が補正予算の一部を執行停止、組み換えを始めたものだから、経済情勢を見誤っているのではないか、拙速に過ぎないかと、にわかにメデイアは警戒警報を鳴らし始めた。今後は、二番底回避のために補正予算、場合によっては二次補正予算、そして本予算へと効果ある経済対策を切れ目なく実行せよ、という要求、批判の大合唱へと変わる気配が濃厚である。

 では一体、メデイアは何%の経済成長率達成を要求しているのだろうか。そもそも、政府はどれほどの経済成長率を目標にして、経済政策を展開するのだろうか。

 人は仕事において、勉学において、スポーツにおいて、自分の実力が遺憾なく発揮できることを第一に願うだろう。レースやテストで実力以上の結果を願うのは人の常ではあるが、それはまぐれかインチキでしか果たされない。一方、体調管理の失敗などで、実力を発揮できないほどくやしいことはない。

 経済運営も同じである。

 その国の経済の実力値を、「潜在成長率」と呼ぶ。中長期的に持続可能な経済成長率、という意味である。一国の成長率は、「供給能力」で決まるから、「潜在成長率は供給能力の伸び率」と言ってもいい。一方、短期的な景気変動は、実質経済成長率(GDP)で表される。これは、需要要因で変化する。昨年のリーマンショック後、世界各国のGDPが大幅に下落したのは、米国を中心に世界需要が一気に減退したからだった。

 一国の経済が実力を常に発揮することは難しく、潜在成長率と実際の成長率は、当然乖離する。この乖離幅を、GDPギャップと呼ぶ。GDPギャップ=潜在成長率-実質成長率である。このギャップをいかに埋めるかが、政府の経済運営の目標になる。実力を遺憾なく発揮させてやる手腕を問われるのである。現在の日本の潜在成長率は1%弱と見られている。それに対して、2008度の実質成長率はマイナス3.2%、09年度予測はマイナス3.3%である。GDPギャップはマイナス4.2~4.3%ということになる。この穴をごくごく単純に埋めるとすれば、GDPを500兆円とすると、その4%である20兆円の財政支出を行う、ということになるのである。

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辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


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