訪日外国人旅行、いわゆるインバウンドの勢いが止まらないですね。
先日の日本政府観光局の発表でも、今年1~10月の訪日客は前年同期比27%増で、既に1100万人を越えたとか。私の周りでも「外国人観光客のおかげで、売上が昨年比で3割増」とか、「高額消費の外国人客が平均客単価を10%引き上げてくれた」と景気のいい話を耳にします。
このように訪日観光が好調なせいか、「おもてなしのビジネスを海外でやったら受けるだろう」と楽観的に考える人が、一段と増えたように思います。先日もあるドキュメンタリー番組で、日系の飲食店や学習塾の東南アジア展開事例を伝えた上で、「日本式サービスが、世界で稼ぐジャパンブランドになろうとしている!」とぶち上げていました。ただ、少しでも実態を知っている視聴者なら、きっと「そんなにうまく行ってないよ」とテレビに向かってぼやいていたのではないでしょうか。
これからも訪日外国人旅行客の数は伸び続け、インバウンドビジネスの成功事例は続々と出てくることでしょう。しかし、国内で外国人観光客相手の商売にいくら手応えがあるからといって、そのまま「日本のおもてなしは海外でも稼げる」と思い込むのは早計に過ぎます。実際に統計データを見ても、平成23年度決算をベースとした国内上場企業の海外売上高比率は、製造業の平均が47.3%であるのに対して、小売業や狭義のサービス業(飲食や宿泊、生活やレジャーなど)になるとまだ1~2割程度に過ぎません※1。
ただでさえ「製造業に比べて難しい」と言われるサービスの海外展開ですが、おもてなしの要素を伴うサービスになると、さらに難しさが際立ちます。日本人が誇りに思っているおもてなしのビジネスが、なぜ海外では成功しないのか。主な要因を挙げてみました。これから海外進出を目論んでいるサービス業の方々には、これを読んで褌(ふんどし)を締めてかかって頂きたいと思います。
※1 みずほ総研論集2013年I号「我が国サービス産業の生産性分析」