経営×ソーシャル
おもてなしで飯が食えるか?
【第7回前編】 2015年3月12日
著者・コラム紹介 バックナンバー
山口英彦 [グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

「おもてなし」が世界に広がらない7つの理由(上)

 訪日外国人旅行、いわゆるインバウンドの勢いが止まらないですね。

 先日の日本政府観光局の発表でも、今年1~10月の訪日客は前年同期比27%増で、既に1100万人を越えたとか。私の周りでも「外国人観光客のおかげで、売上が昨年比で3割増」とか、「高額消費の外国人客が平均客単価を10%引き上げてくれた」と景気のいい話を耳にします。

 このように訪日観光が好調なせいか、「おもてなしのビジネスを海外でやったら受けるだろう」と楽観的に考える人が、一段と増えたように思います。先日もあるドキュメンタリー番組で、日系の飲食店や学習塾の東南アジア展開事例を伝えた上で、「日本式サービスが、世界で稼ぐジャパンブランドになろうとしている!」とぶち上げていました。ただ、少しでも実態を知っている視聴者なら、きっと「そんなにうまく行ってないよ」とテレビに向かってぼやいていたのではないでしょうか。

 これからも訪日外国人旅行客の数は伸び続け、インバウンドビジネスの成功事例は続々と出てくることでしょう。しかし、国内で外国人観光客相手の商売にいくら手応えがあるからといって、そのまま「日本のおもてなしは海外でも稼げる」と思い込むのは早計に過ぎます。実際に統計データを見ても、平成23年度決算をベースとした国内上場企業の海外売上高比率は、製造業の平均が47.3%であるのに対して、小売業や狭義のサービス業(飲食や宿泊、生活やレジャーなど)になるとまだ1~2割程度に過ぎません※1

 ただでさえ「製造業に比べて難しい」と言われるサービスの海外展開ですが、おもてなしの要素を伴うサービスになると、さらに難しさが際立ちます。日本人が誇りに思っているおもてなしのビジネスが、なぜ海外では成功しないのか。主な要因を挙げてみました。これから海外進出を目論んでいるサービス業の方々には、これを読んで褌(ふんどし)を締めてかかって頂きたいと思います。

※1 みずほ総研論集2013年I号「我が国サービス産業の生産性分析」

山口英彦[グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

東京大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネススクール経営学修士(MBA、Dean's List表彰)。 東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ボストンコンサルティンググループ等を経て、グロービスへ。現在は同社の経営メンバー(マネジング・ディレクター/ファカルティ本部長)を務めながら、サービス、流通、ヘルスケア、エネルギー、メディア、消費財といった業界の大手企業クライアントに対し、戦略立案や営業・マーケティング強化、新規事業開発などの支援・指導をしている。また豊富なコンサルティング経験をもとに、経営戦略分野(新規事業開発、サービス経営、BtoB戦略など)の実務的研究に従事。米国のStrategic Management Society(戦略経営学会)のメンバー。 主著に『法人営業 利益の法則』(ダイヤモンド社)、『サービスを制するものはビジネスを制する』(東洋経済新報社)、『日本の営業2011』(共著、ダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール 戦略論』(共訳、東洋経済新報社)。


おもてなしで飯が食えるか?

オリンピック招致の最終プレゼンを契機に、各所で注視されている「おもてなし」。日本人の細やかな心づかいを製品、サービスに反映させて収益向上につなげようと考える企業は多いと思うが、そこに落とし穴はないか?グロービス経営大学院の山口英彦が近著『サービスを制するものはビジネスを制する』のコンセプト等も反映させながら問いかける。

「おもてなしで飯が食えるか?」

⇒バックナンバー一覧