IT中期計画の立案などで、事業部門やIT部門が起案するIT戦略施策および投資案件に対して、経営者が施策実行の可否や投資の優先順位を正しく判断するためには、これらの相対的な位置づけをわかりやすく説明することが有効である。1枚の図で複数の施策の位置づけを俯瞰的に表現するビジネスポートフォリオの作成を推奨する。

経営者が求める判断材料とは

 次年度に向けたIT予算計画や、中長期IT計画を策定する時期になると、IT部門は、中期経営計画の読み解き、各事業部門の事業戦略のヒアリング、IT部門における課題の整理などを行い、これらを取りまとめて戦略施策案を列挙した資料を作成して、経営の意思決定を仰ぐのが一般的だ。

 このプロセス自体に問題があるわけではないが、経営者から聞かれるのは、「一つひとつの施策は、もっともらしく効果が述べられているものの、相対的にどれが重要なのかがわかりにくい」という不満の声である。

 IT部門が取りまとめるIT計画における戦略施策リストには、施策の概要、現状の課題、見込まれる効果などが記載されているものの、その書式、記載項目、表現(定量/定性など)は必ずしも揃っておらず、複数の施策を俯瞰的に把握し、客観的に評価できるようにはなっていないことがその原因といえる。

 経営者は、個々の施策案件の背景を詳しく知っているわけではないので、書面上に記載された内容を頼りに、実行の可否や投資の優先順位に対する判断を下さなければならない。

 事業部門からのニーズに基づくIT戦略施策が多数あげられる場合もあるが、要望した事業部門では自部門の案件が最優先だと考える傾向にあり、これらの投資妥当性や優先順位を正当に比較することは困難といえる。

 したがって、経営者は1枚から数枚の簡潔な資料で、複数の施策を俯瞰的に把握し、客観的に評価できるビジネス視点の判断材料を求めている。そこで、複数の施策を1枚の図にプロットしたビジネスポートフォリオの作成を推奨したい。

経営視点の評価項目に絞り込む

 経営者が投資判断を下すうえで重要な評価基準とは、どのようなものであろうか。

 IT投資や戦略施策の実行可否や優先順位を検討する際の判断基準となる要素は様々考えられるが、経営者が最も重要と捉えるのは、経営上の重要性、期待される効果、そして投資規模の3点に他ならない。