「今回の選択は、原子力産業の衰退を決定付けることになるだろう。原子力発電所比率が高い関西電力は、いばらの道でもリプレース(新設)を主張すべきだったのでは──」

 こう語るのはエネルギー政策が専門の東京理科大学の橘川武郎教授だ。

 今回の選択とは、関電が下した「2基廃炉、3基延長」という決断のこと。3月17日、同社は福井県の美浜原発1、2号機の廃炉を決定し、さらに高浜原発1、2号機、美浜3号機の最長20年間の運転延長に向けた再稼働の審査を原子力規制委員会に申請した。

廃炉を決定した美浜原発1、2号機(右の二つ)。左の3号機は業界初の運転延長を目指す Photo:JIJI

 東日本大震災後に、原発の運転期間は原則40年に制限されたが、例外として、新規制基準をクリアすれば1回に限り最長20年間の運転延長が認められる。震災前には原発比率が50%を超えていた関電にとって、原発は“レゾンデートル”。業界初の運転延長の申請に踏み切ったのは当然といえるかもしれない。

 しかし、仮に申請した3基で運転延長が認められたとしても、40年前の古い原子炉を動かし続けることになり、世界で建設が進んでいる最新炉の運転ノウハウや先端技術は得られない。進化の見られない産業に学生や若手技術者が集まるわけもなく、人材の“原子力離れ”は一層深刻になるだろう。日本において原子力産業は衰退するばかりだ。

 実は、関電は震災前に、今回廃炉を決定した美浜1号機のリプレースを検討していたのだが、「世論の原発への風当たりが厳しい中、リプレースについて口にできるような度胸は関電にはなかった」(業界関係者)。

 こうした消極姿勢が電力業界全体へ波及し、原発産業“衰退”への最初の一歩となる。