消費者が何を買うかで世の中は変わる

石坂 たとえば?

小島 日本は包装が多すぎます。私は普段、オーストラリアのパースで暮らしているのですが、高級デパートでも商品をそのまま袋に放り込むだけですし(笑)、スーパーの野菜は包装されていません。裸のまま積んであるだけ。
 ところが日本では商品を一つひとつ薄紙にくるんで小袋に入れてくれたり、野菜もプラスチックトレーに入れられている。1回お料理するだけで、どんどんトレーがたまっていく。絶対におかしい! 悪しきおもてなし文化では?

石坂 それに、プラスチックトレーをリサイクルするときには水洗いします。たとえば、肉の入っていたトレーを洗うでしょう。そこにかかる水がもったいない。日本には水があるからできるけれど、水のない国ではそんなことはできない。

小島 オーストラリアは慢性的に水不足が続いています。パースでもスプリンクラーの使用時間が厳しく制限されています。不要な水まきを減らすため、新しい家では芝のない石畳のテラスが主流になっています。うちもシャワーヘッドに節水弁を入れて水流を弱くしています。淡水が貴重なので、暮らしながら自然と気をつけるようになりました。

石坂 そう考えると、プラスチックトレーを水洗いしてからリサイクルするという方法は世界標準にはなりえないですね。

小島 そうですね。肉はともかく野菜は直に山積みで売ってもいいんじゃないかって思う。
消費者が何を選ぶかが大事ですよね。裸のトマトを買うのか、トレーに包装されたトマトを買うのか。選んで買うことは投票行動と同じように、世の中を変える意思表示。何が選ばれるかで、世の中の「常識」が決まります。野菜の個別包装ってなんだったんだろ?っていつか言う日がくるといいですね。私たちが何を選ぶかで世の中を大きく変えることができるのです。

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。