輝かしいIT企業も、テクノロジーや経営者、ビジネスモデルの衰退によって30年で多くが歴史に消えてしまう──。決算会見でそう論じた孫社長は、ソフトバンクを再び“脱皮”する方策を海外投資に見出している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、森川 潤)

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「実質的な後継者なのかというお話がありましたが、答えは“イエス”です」

 5月11日、ソフトバンクの2015年3月期の通期決算の会見場でのこと。壇上に上がった孫正義社長は、これまで長きにわたって同社最大の経営リスクといわれてきた後継者問題について、あっさりと候補者を認めた。そして自身に次ぐナンバー2として、今年6月には代表取締役副社長兼COOへの就任を明らかにした。

 その意中の人物とは、わずか9カ月前にソフトバンクの経営陣に加わったばかりの米グーグルの元最高幹部、ニケシュ・アローラ氏だ。インド空軍の軍人の家庭に生まれたアローラ氏は、奨学金を頼りに米国ボストンの大学を卒業し、金融、通信キャリア、インターネットと三つの分野にまたがってそのキャリアを築いてきた、たたき上げの人物として知られている。

 04年、グーグルが上場したまさにその年に同社に採用されると、ビジネス分野でその頭角をめきめきと現した。そしてビジネス部門の最高責任者(Chief Business Officer)にまで上り詰めたアローラ氏を、孫社長がワイングラスを片手に口説き落とした経緯は、「週刊ダイヤモンド」の特集記事「孫正義 世界を買う」(15年1月24日号)の独占インタビューで紹介した通りだ。