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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

中途採用ばかりが出世する
ベンチャー企業の人心荒廃(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第16回】 2015年5月26日
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 今回は、躍進するベンチャー企業(正社員数400人)で働く、34歳の男性社員を取り上げたい。中途採用を経て入り10年近く経つが、ここ数年、理不尽な扱いにキレそうになる日々だという。

 社長や役員たちが、よその会社からハンティングを繰り返し、地道にキャリアを積んできた若手社員を認めないのだという。最近は、自分よりも若く実績にも乏しい男性がハンティングされ、なぜか部長になった。

 怒った男性社員は、すでに退職した者との「密談」を繰り返し、自分も近いうちに辞めようと決意した。特に「ベンチャーに長くいるやつって、バカだとつくづく思うよ」という言葉に感化されたようだ。そんな彼の胸の内を聞いた。


「また変なやつが入ってきた……」
役員はヘッドハンティングばかり

「また、わけのわからないやつが来た……」。躍進するベンチャー企業では、ヘッドハンティングの名目で、経営者の“お友達”が高待遇で迎えられる。 長く務めてきた社員は、浮かばれない
Photo:BRAD-Fotolia.com

 「〇〇って、あの人のこと?テレビの番組に時折、出るよね」 「また、変なやつか……」

 昨年秋、イントラネットに新たに役員になった男性の氏名が載った。50代前半の「IT関連の研究者」であり、「タレント」だった。

 法人営業部(部員60人)のマネジャーの大石(34歳)は、怒りが湧いてきた。同じフロアにいる社員たちからは、あきらめに近いため息が法人営業部のオフィスのところどころから聞こえてくる。

 「今度は、タレント崩れかよ~」「いや、研究者崩れだよ……(笑)」「どちらの世界でも、通用しないんだろう?」「うちの役員会は、ハローワークかよ(笑)」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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