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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

57歳シングルマザーの起業成功に見る「縁」と「しがらみ」

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第29回】 2015年7月22日
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東日本大震災を機に
縁あって知り合った女性

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 この2週間ほど、帰省と仕事兼ねて、日本に戻っていた。出張も兼ねているので、日本ではいろいろなところを転々としていて忙しかったのだが、その合間を縫って、ある女性起業家に会った。仕事ではない。彼女は筆者家族の大切な友人だ。

未経験から始めた農業でいつの間にか大成功を収めた女性に教わった「縁」を生かす考え方とは?(写真は本文と関係ありません)

 東日本大震災の際、関東に住んでいた筆者は、直接被害には遭わなかった。だが当時、2歳児と生後2ヵ月の赤ん坊のいた我が家は、流通の混乱と人々による買い占めで、ミルクやオムツなどの必需品が購入できなくなった。また政府は安全としていたが、小さな子どもにとって放射線の影響がどの程度なのか、不安は拭えなかった。

 そのため、地震から4日後に、九州の友人を頼りに、ある地方の家を3週間間借りして「疎開」させてもらうことにした。おかげで、安全な食材と生活必需品を確保することができたのだが、一つ問題があった。

 いつまでも疎開しているわけにはいかない。筆者も妻も、仕事を持っている。関東に戻る必要があるが、食材について当時不安があった。筆者の住んでいた地域の野菜類は大抵、福島産や茨城産で、それらの野菜がすぐに店頭に戻ってくるとは思えなかったし、野菜が店頭に戻ったとして、大人はいざ知らず、子どもへの放射線影響は心配だった。

 筆者と妻は、疎開先で、関東の家に定期的に野菜を届けるサービスを提供してくれる農業関係者を探した。簡単ではなかったが、いろいろ探しているうちに、オーガニック食材を使ったレストランの関係者から、ある女性を紹介された。

 彼女は、ちょうど個人農家として起業したばかりだった。九州の山間にある畑で、無農薬野菜を作りはじめたが、その顧客を探しているところだった。筆者らは早速、彼女に連絡を取り、実際に彼女の畑に案内してもらった。40歳くらいの美人の女性が畑の畦道で、筆者らの到着を待ってくれていた。ジーンズにTシャツのラフな格好で、「こっちですよ」と笑顔で案内してくれる。

 「農薬を使っていないから、汚れてなければ水で洗わなくても大丈夫ですよ」

 そう言って、ミニトマトを枝からもぎ取って渡してくれた。その美味しさには筆者と妻は、目を丸くした。すぐに、野菜の定期購入を申しこんだ。筆者家族が彼女の最初のお客さんだったという。とても喜んでくれた。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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