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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

「30代社員」を食い物にする職場に
見切りをつけろ!(下)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第25回】 2015年7月28日
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>>(上)より続く

 だが、意見を闘わせる相手には思えなかった。平田と黒井は、問題の本質に向かい合うことをしない。広報課という会社の顔になる重要な部署で、なぜ1人の男性社員ばかりに仕事が集中しているのか、その歪さを徹底して議論しようとしない。文句を言い易い清水をとりあえず叱ることで、その場を取り繕おうとしているのだ。

 清水がその場を離れようとすると、2人は漫才師のようにじゃれ合っていた。

互いに「心ここにあらず」
理不尽な異動で決心がついた

 半年後の今年5月、清水は会議室に呼ばれた。数週間前から「何かありそうだ」という雰囲気を、何となく察知していた。年1回の人事異動は7月1日にあるが、その辞令が出るのがこの時期なのだ。会議室には、平田と黒井がいた。部屋に入ったとき、黒井が「どうぞ、どうぞ」と手を差し出した。咄嗟に、自分が異動になると察知した。

 黒井は清水に対して、普段はそんな丁寧な態度をとらない。「もう俺の部下ではないのだ」といった思いが、その仕草に出ていた。一方の平田は黙ったままだった。妙にさわやかだった。

 その後入ってきた担当役員の伊藤は、席に座ると清水に告げた。

 「君には、営業部に行ってもらう。向こうの担当役員の匠さんや、部長の大槻君も、君のような30代の男が欲しいと言っている。よかったじゃないか……」

 黒井は、「伊藤常務が懸命に動いてくれて、君が腰を据える場所を見つけてくれたんだ」と言い始める。そして、「今度の部署では、30代の男として……」と忠告を始める。清水は返事もしなかった。1時間近くに及ぶ話の終わりに、「異動を受け入れるか否かは、考えさせてください」とだけ答えた。

 3人は黙り込む。その後のことを清水は覚えていない。興奮していたのかもしれない。記憶にあるのは、担当役員の伊藤が内線電話で、営業担当役員の匠のもとへ急いで連絡をしていたことだ。清水が「謀反」を起こしたから、2人の役員で協議をしたのだろう。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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