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成長頼みの財政再建計画は「失敗の典型」だ(下)

河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長

ダイヤモンド・オンライン編集部
2015年7月31日
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>>(上)より続く

目標がいつの間にか変質
何段階もの骨抜きで“大甘”に

 歳出にキャップをかけることについては、経済財政諮問会議の民間議員も「それでは、関係者の意識や行動に変化をもたらすような制度・仕組みの改革につながらず、持続できない」と説明していました。現実は全く逆であり、財政の専門家が聞いたら笑う話です。少なくとも、カナダ、スウェーデン、オランダ、ニュージーランド、オーストラリアなどの財政健全化に成功した国では全てキャップをかけています。

 これらの国々では、首相と財務大臣などごく少数の主要閣僚が集まり、各省庁別に“これから○年はこの金額”というふうに複数年度でキャップをかけます。

 政治的に覆すことができるのであれば、各省庁は例えば族議員などの政治力を使ってこれを外そうということに全力を投入します。しかし、キャップがもう動かせないとなれば、その金額の中で最大のパフォーマンスを上げることに注力します。それが評価につながると省庁の人たちも分かっているからです。つまり、自分たちでメリハリをつけて、評価される分野に使うお金を増やし、もう時代の要請に応じていないと思った分野は減らす。結果的に、歳出削減がうまくいく。

 これを“違う”と言うのは、各国の成功の歴史を見ていないとしか言いようがありません。

 他にも問題はいくつかありますが、重大なのは、財政健全化の目標が、いつの間にか変質していることです。

 当初は、“2020年度にプライマリー収支を多少の黒字にし、その後は公的債務のGDP比を安定的に低下させる”としていました。ところが、いつの間にかプライマリー収支プラスマイナスゼロが目標になってしまっている。これだけ公的債務が大きい国で、プライマリー収支ゼロを目標にしている国などありません。“超甘”の目標です。

 では公的債務のGDP比を安定的に低下させるためにどのくらいのプライマリー収支黒字が要るのか。現在、公的純債務がGDPの1.6倍ありますから、仮に名目成長率より名目金利が1%程度高いと考えると──政府の基本設定もそうなっています──1.6×1で、1.6%くらいはプライマリー収支黒字を確保しなければならない。

 これほど公的債務が膨らんでいる場合、本来ならば利払い費を含めた財政収支が目標でなければなりません。でなければ、いずれ利払い費が膨らんで財政危機に陥ってしまうからです。故に公的債務の安定的な低下につながるプライマリー収支黒字を言ってきたはずなのに、それがいつの間にかプラスマイナスゼロという超甘の目標となり、しかもこのプラスマイナスゼロも達成できないのを、なぜか税金が増えて対応できる、という話になっている。何段階もの“骨抜き”が起こっているのです。

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