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稲盛和夫氏に聞く「経営の心、人生の心」(下)

ダイヤモンド ハーバード・ビジネス・レビュー編集部
2015年8月6日
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Photo by Aiko Suzuki

>>(上)より続く

諦めなければ失敗はない

――稲盛さんは変化に対し、柔軟に対応しておられる印象があります。それも人として何が正しいのかということを考えていけば、過去の習慣などに囚われることもないということですか。

 そうです。私は若い頃から、迷ったら出発点に返ろうとしました。自分では登山などしたことはないのですが、たとえば登山の途中で濃霧に襲われて道がわからなくなったら、元の地点まで一度降りていって、そこから見直そうということです。つまりは迷いが出てきたら、原点に返ろうということを自分に言い聞かせ、社員にも話をしてきました。

――新しい技術の開発にも果敢に挑戦されていらっしゃいますが、このまま開発を続けてもダメかもしれないという時、やめるかどうかの判断はどのような基準で下されているのでしょうか。

 技術開発は、やると決めたら、たとえうまくいかなくても一生懸命粘って努力を続ける。これしかないと思っています。以前、日本の大手電気メーカーの幹部の方々が集まる会合で話をしたことがあります。私の話の後に質問があり、あなたは開発に取り組んだものがすべて成功したみたいなことをおっしゃるけれども、技術の世界ではそんなことはありえないのではないか。うまくいかなかったこともあったのではないかと聞かれました。

 私は「いや、うまくいくのです。それは諦めないからです。できるまで頑張るからです」と答えました。そう言うと皆さんポカンとされました。実際うまくいかなくなって諦めてしまうから失敗になるのであって、それを何年かかってでもやり抜けば、やがて成功につながっていくのです。ただ、あまりに単純でバカみたいな答えでしたから、その場にいた方々にはおそらく真意はわかってもらえなかったことでしょう。

 技術開発では、これを成功させて会社の発展につなげていきたいという気持ちが最も大切なのです。その思いを持ち続けられるかどうかが、成功と失敗を分けると思っています。だから私は途中でやめるという選択肢を持ちません。

 太陽光発電もそうでした。太陽光発電が将来必ず、世界のエネルギー危機を救うと思い、シリコンの溶融した液体の中から最初はフィルム状に引き上げ、それを巻き取って太陽電池にするという技術開発を一九七五年から始めました。その後、大手電気メーカー二社とともに合弁会社を設立したのですが、開発がなかなかうまくいきませんでした。そのため、しばらくしてその二社がやめたいと言ってこられた。私は資本金を全部お返しして、以後は京セラ一社で十数年研究を続けてきました。このように、もう皆が諦めていくにもかかわらず粘ってきたところに花が咲き、いまや太陽光発電では当社が日本で一番強い企業になりました。それも諦めずにずっと続けてきたからだと思っています。

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