「幸せ食堂」繁盛記
【第九回】 2015年8月11日 野地秩嘉

韓国料理を食べに、浦和に行こう!
なぜ浦和なのか…その理由は

「伽耶」という店名の意味とは

 韓国料理の店「伽耶の家(かやのいえ)」は浦和駅から歩いて2分の場所にある。料理、焼肉ともに値段はリーズナブルだ。銀座、六本木、麻布十番の焼き肉店に比べると、値段は15パーセントほど安く、量は1.2倍はある。焼肉、韓国料理を食べるならば、都内の店よりも浦和を目指すべきかもしれない。

 経営しているのはマダムの金海里(キム・ヘリ)さんとご主人。マダムは言う。

「伽耶とは昔、朝鮮半島南部にあった国の名前です。みなさんご存じかしら? 日本には『伽耶』とついた焼肉屋がたくさんあるんです。その店のご主人の聞いてみてください。経営している人は、まず間違いなく釜山出身で名前は金(キム)さん。釜山には金さんがたくさんいるから」

 

 日本料理が地域によって個性があるように、韓国料理にも郷土色がある。伽耶の家では焼肉よりも、むしろ、韓国南部の料理、そして宮廷料理のコースを食べるといいだろう。

 ふたたび値段の話になるけれど、宮廷料理コースといえば、都内では1万円くらいは取られる。ところが、同店では3500円(宴会コースA)から食べられる。名前に「宮廷」と付いているが、同店のそれは庶民的だ。庶民による、庶民のための宮廷料理である。

 マダムは1952年、八王子で生まれた在日二世だ。父親は新聞記者で、母は主婦。子どもの頃に大宮に引っ越してきて、埼玉県で育った。1983年、料理上手の母親は浦和にテーブルが4卓の小さな店を開いた。それが「伽耶の家」の前身である。

「おいしくて、安くて、家庭のお惣菜が多かった」から、店は繁盛した。そして、1993年、現在の場所に移転し、店名を伽耶の家に変えた。客席も増やして、いまでは55席。座敷もふたつある。 

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野地秩嘉 1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。出版社勤務、美術プロデューサーなど を経て、ノンフィクション作家に。食や美術、海外文化の評論、人物ルポルタージュ など幅広く執筆。近著に、「TOKYOオリンピック物語」「イベリコ豚を買いに」「打 ち合わせの天才」「アジア古寺巡礼」「アジアで働く いまはその時だ」など。


「幸せ食堂」繁盛記

この連載は、味がよく、サービスも悪くなく、値段はリーズナブルで、しかも、できればハイサワーやホッピーを置いている店のグルメガイドだ。ここで紹介される店は、金持ちの社長やグルメ評論家はまずいない。著者は、そういう店を「勤労食堂」「国民酒場」と呼ぶ。そこでは客が微笑しながら食べている。ほほえみながら食べている人と一緒にいることは至福だ。人生の幸せは勤労食堂もしくは国民酒場にある。

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