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佐藤可士和の打ち合わせ
【第6回】 2015年8月10日
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佐藤可士和 [アートディレクター]

どんな立場の人でも
「否定」するなら「代案」を出せ

打ち合わせはあまりにも身近で、そこかしこの企業で行われてきました。日本を代表するアートディレクター・クリエイティブディレクターである佐藤可士和氏も、その多忙な生活の多くを打ち合わせで費やしています。そして、たくさんの打ち合わせの経験からいかにそれが大切なものか『佐藤可士和の打ち合わせ』(ダイヤモンド社)で述べています。
前回は打ち合わせで本音をぶつけ合う重要性についてお伝えしましたが、腹を割った打ち合わせではどんな効果が得られるのでしょうか。また、相手の意見に「NO」という場合に踏まえておきたいこととはどんなことでしょうか、解説します。

どんどん口に出すことで
「思考の輪郭」がはっきりしてくる

 「本音でしゃべれない」「そもそもしゃべることができない」という背景には、「間違ったことをしゃべってしまうのではないか」という不安があるのではないでしょうか。

 しかし、いきなり正解を語れる人はいません。僕だって、いきなりど真ん中のアイデアが出てくることはないのです。ときには、ピント外れの質問をしてしまったり、間違ったアイデアを口にしてしまったりすることもある。でも、これが大事なのです。間違っていてもいいから、口に出すことが重要な意味を持ってくるのです。

 何かをしゃべって口に出す「言語化」という作業は、思考を具体化する第一歩です。思考は、まだ脳の中に何かがぼんやりある状態。抽象的な存在です。そしてこれは、口に出して、初めて具体化していきます。思考はしゃべることで、表に出てくるのです。
 逆にいえば、しゃべらなければ、思考を具体化するのは難しいということ。

 「もしかしてこれかもしれない」と思ったことを口にすることによって、抽象的な意識や概念は具体化していきます。たとえ間違っていたとしても、同じようなことを考え、似たようなことを繰り返すことによって、だんだんと思考の輪郭がはっきりしてくる。いきなり、思っていることがズバッと出てくる人はなかなかいません。しゃべっているうちに、次第にはっきりしていくものなのです。
 間違ってもいいから、口にしたほうがいい。それが結果的に、いいアウトプットに近づく方法なのです。

<POINT>
打ち合わせポイント(13) 間違いを繰り返すから正解に近づく
打ち合わせポイント(14) 間違っていてもいいから、どんどん口に出す
打ち合わせポイント(15) 思考は言語化することで具体的になっていく

NOと言うなら、
どんな立場であれ代案を

 打ち合わせの出席者は、善意で行動しなければいけません。善意で行動することが、打ち合わせの質を高め、いいアウトプットを生むのです。

 よって、間違った発言に対して寛容でなければなりません。これが「何を言ってもいいんだ」という空気を生み、しゃべりを活発にするのです。

佐藤可士和(さとうかしわ)
博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリほか多数受賞。慶応義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書にベストセラー『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)他。

 打ち合わせの空気を不穏にし、議論を前に進めることを妨げる「否定的な意見」も、善意で行動することを前提にしていけば、前向きな意見に変えていくことができます。それは、否定をするのであれば、代案を出す、ということ。なぜなら、打ち合わせの場は、みんなで作っていく場だからです。

 最終的によいアイデアを作り上げていくためには、プロジェクトや仕事を良くしよう、何とかいい方向に向かわせようという善意に基づいた建設的な取り組みが欠かせません。その意識がなければ、打ち合わせに参加する資格はないのです。
 ある人が出した意見に反対したり、否定したりすること自体は、問題ないのです。それも、ひとつの意見であり、「しゃべり」だからです。しかし、否定だけで終わってしまったら、何も前に進みません。
 だから、否定をする、ダメ出しをするのであれば、代案を出す。それをルールにするのです。しかも、その代案は、相手のアイデアを凌駕するような、相手よりもレベルの高いアイデアでなければいけません
 出したことによって、相手や周りの人が、「そうだよね」「そっちのほうがいいよね」と言えるくらいの意見を言うのが、代案です。
 部署や立場が違っても代案を出すべきです。「オレは営業だから、代案は制作側が考えろ」というような姿勢は、野球に喩えたら「オレはセカンドなんだから、他の塁のベースカバーには入らない」と言っているのと同じなのです。代案は、営業だろうが、管理部門だろうが、経営者であろうが、どんな立場であれ出すべきでしょう。

 僕が社会人として最初にキャリアを積んだ博報堂は、その意味でとてもいい会社でした。営業がコピーを考えたり、デザイナーが売り方のアイデアを考えたりしても、まったく問題がありませんでした。

 持ち場はあるものの、クリエイティブということに関しては、誰が何を言っても自由な文化があるのです。なぜなら、本当の目的はそれぞれの持ち場の役割を果たすことではなく、プロジェクトのゴールを完遂することだからです。それがより良い形になるのであれば、ポジションなどどうでもいい。
 それを僕は社会に出てすぐに叩き込まれましたが、とてもいい教えだったと思っています。まったく正しい考え方です。

 野球で自分のポジションにだけとらわれて、他の選手と連係しないのでは、プレーヤーとして使い物になりません。いつまでたっても一流の仕事人にはなれないでしょう。

 次回は、打ち合わせの設計図の重要性についてお話しを進めていきます。

<POINT>
打ち合わせポイント(16)否定をするなら、かならず代案を出す
打ち合わせポイント(17)違う持ち場の人が、アイデアを考えてもまったくかまわない

 

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佐藤可士和(さとうかしわ) [アートディレクター]

博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリほか多数受賞。慶応義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書にベストセラー『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)他。


佐藤可士和の打ち合わせ

 打ち合わせはあまりにも身近で、これまで何の課題ももたれずに、そこかしこの企業で行われてきました。日本を代表するアートディレクター・クリエイティブディレクターである佐藤可士和氏も、その多忙な生活の多くを打ち合わせで費やしてきました。その中で、いかに効果的に打ち合わせをするかが、仕事の肝だと考えるようになったといいます。  拙著「佐藤可士和の打ち合わせ」(ダイヤモンド社)には、その打ち合わせ術が存分に盛り込まれています。今回の連載では、そのエッセンスをお伝えしていきます。  打ち合わせを制する者は仕事を制する! あなたも是非打ち合わせマスターになってください。

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