新国立競技場を東京五輪が終わったらどう使うか。下村文科相の発言が憶測を呼んでいる。

「ナショナルスタジアムにこだわらない。2020年以降は民間委託するが、プロの野球やサッカーのホームグラウンドにするのは十分ありうる話だ」

 産経新聞が報じた記事は「自民党の一部議員らが野球場への再整備を主張していたが、関係閣僚会議のメンバーが言及したことで、議論が本格化しそうだ」と結ばれていた。

 不透明で不可解な巨大事業の裏で、誰がどんな筋書を描いているのか。「五輪が終わったら読売巨人軍のホームグラウンドに、というバカげた事態にならなければいいが」と警戒する人は少なくない。

 建設計画が白紙撤回されたばかりなのに、五輪後の利権まで話題になるのは、新国立競技場に疑惑のまなざしがいかに強いかを物語っている。「ゼロからやり直し」と言いながら、日本スポーツ振興センター(JSC)が引き続き事業主体を務める。指導監督に当たるのはあの下村文科相。「影の五輪相」ともいわれる森喜朗元首相は今も大きな顔で、体制は何も変わっていない。競技場のデザインをやり直せば一件落着というのだろうか。

下村文科相が言及
五輪後はプロ球団の本拠地も?

 下村大臣の民間委託発言は18日、産経記者によるインタビュー記事として伝えられた。「出処進退について逃げるつもりはない」と言いながら、工事費が膨張したことについて「金額はJSCが責任を持つべきだ。JSCで判断できないから文科省に上げたというのはその通りかもしれないが、なぜ1625億円で抑えらなかったのか」などと他人事のような口ぶりだ。

 記事が出た翌日、工費膨張を巡る新事実が明らかになった。JSCは2013年7月に設計会社から工費の膨張を知らされていた。ザハ・ハディド氏のデザインなら3462億円の工費がかかる、と分かり8月に文科省に報告した。

 9月のIOC総会で東京五輪が決まる前から文科省、つまり下村大臣は予定価格では収まらないことを知っていた。「なぜ1625億円に抑えられなかったのか」などとJSCに責任を転嫁して済む問題ではない。

 その大臣が産経インタビューで「五輪後のプロ球団誘致」に言及したのである。