経営課題の複雑化と資本市場や社会からの要請の高度化により、CEO職の難易度は過去にない水準に高まっている。このため時代はいま、企業に真のチーム経営を求めている。それを実現するうえで大きな壁となっているのが、CEOサクセッションに比べて仕組みの整備が遅れている経営幹部、すなわち経営トップチームメンバーのサクセッションだ。この壁をどう乗り越えるべきか。グローバルな組織コンサルティングファームであるコーン・フェリーの増田智史氏が、独自の調査結果をもとにその指針を示す。
あるべき執行体制と機能が原則通りに設計されていない
──日本の大手企業における経営幹部サクセッション(継承)には、どのような課題がありますか。
増田(以下略)CEOサクセッションの仕組みは整備されつつありますが、CEOを除く経営トップチームのメンバーについては、体系的なサクセッションの取り組みが進んでいません。
経営環境の複雑さが増し、かつてないほど経営の舵取りは難しくなっています。加えて、投資家や社会との対話を通じて信頼関係を構築しなければならず、説明責任を求められます。CEO一人ですべてをコントロールするのは現実的ではなく、経営執行メンバーが一丸となった真のチーム経営が不可欠となっています。それは多くのCEOが理解しているのですが、経営幹部サクセッションの仕組みが未整備のため、理想の組閣ができず、経営チームとしての競争力を発揮できない現実があります。
私たちコーン・フェリーは、日本企業における経営幹部サクセッションの実態を把握し、今後への示唆を抽出するための調査を行いました(注)。その結果から、4つの課題が見えてきました。
注:グロービス社と共同で2023年11〜12月にアンケート調査を実施。2024年1〜3月に追加ヒアリング調査を行った。