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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

片や本社に栄転、片や早期退職の末に病死
東大卒の支局長2人に見る「人生の明暗」

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第30回】 2015年9月1日
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東大の友人だった2人の支局長の明暗を分けたものは何だったのか

 今回は、出世競争の勝者と敗者を取り上げたい。左遷されたテレビ局の支局長と新聞社の支局長である。2人とも50代前半で、高学歴だ。

  今や、双方には大きな差がある。片方は惨めな姿に耐えられず、自分を見失っていく。一方で、新聞社の支局長はそんな2人を冷めた目でみつめ、早々と栄転し、出世していく。

 今回のエピソードは、そうした人たちに奇異な思いで接しつつ、会社のしがらみを覚えていく中堅の新聞記者が語ってくれたものだ。記者が見た人間模様を紹介することで、人事のタテマエとホンネを考えたい。


地方都市のスナックで夜な夜な熱唱
「金づる」となったテレビの支局長

 ここは、北関東の某県の県庁所在地――。

 市の中心部にある「スナックれいみ」の窓からは、県庁の十数階の茶色いビルが見える。店内にいる客10人ほどのうち、最も年齢が若いのが、新聞記者の田口(24歳)だった。入社して2年目。まだ、仕事もうろ覚えだ。酒もあまり飲めないだけに、外を眺めながら、つまらぬ時間を過ごしていた。上司の「命令」で、この場に参加していた。

 午後10時を過ぎた頃、店内の雰囲気が変わり始めた。キー局の一角を占めるテレビ局の支局長が、マイクを握りしめた。二十数年も前に流行った『就職戦線異状なし』という邦画の主題歌としてヒットした曲のメロディが流れる。

 この支局長は皮膚が浅黒く、目が大きい。鼻は低いが、筋骨型で、精悍な顔つきをしている。音程を完全に外した、太い声がずーんと響く。歌っているというよりは、「叫んでいる」という状態に近い。体の具合が悪いのか、時々せきこむ。

 その横でタンバリンを軽くたたき、上半身を左右にゆすり、「イェーイ」と小さな声を繰り返すのが、このスナックのママ、れいみである。年齢は「自称27歳」。実際は30代後半に見える。お笑い界の「大御所」と呼ばれる某タレントを、女性にしたような雰囲気を漂わせる。

 一説には、離婚を二度しているらしい。今は独身。めぼしい男性が客として現れるとそっと近寄り、親しくなる。ママの自宅は市内の外れにあるにある高級マンションだ。閉店間際、男性のところへ電話を入れ、「今日、来てくれないと、お客さんがゼロの日になっちゃう……」と甘えた声を出すらしい。そうして店に顔を出し続けると、男性はいつしか「金づる」にされてしまう。そうなると、店に通わざるを得なくなる。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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