読み書きができないスタッフでも
誤配しない仕組みとは?
サービスの歴史は約100年と長く、それもあってか利用者からの信頼も厚い。インドという交通網が整備されていない環境で、人の手だけで行われるアナログなビジネスが、これだけもの長い年数続いているというのは目を見張るべき事実だろう。
それを実現しているのは、シンプルかつ精緻なオペレーションシステムだ。配達するスタッフの多くは、読み書きができないインド人男性。ハンデがある彼らがすぐに配達できるよう、集荷と配達をどのグループが分担するかや、配達先の最寄り駅・住所などを、全て記号と数字でダッバに記載。そうすることで、伝達時に発生する怖れのある人為的なミスを防いでいる。
交通インフラが未発達で、渋滞だらけのムンバイ。ITシステムよりも、地元に詳しい“運び人”たちの土地勘がものを言う
何度も述べているが、インドの交通インフラはまだまだ未整備だ。
有料の高速道路でさえ完全に舗装されているというわけではない。新しい道路の建設や既存の道路の整備工事が至るところで行われているが、スローペースで行われているため、さらなる渋滞に拍車をかけている。雨水排水機能が完備されていない道路が多いため冠水が頻繁に起こり、荷物の配送が滞ることは多い。
統計にも表れている。世界経済フォーラムが発行した2005~2006年版の「国際協力報告書」によると、インドの国際競争力指数は調査対象117ヵ国中45位。中国が48位であることを踏まえると、新興勢の一角として決して悪くはない順位だが、評価項目の一つ「基本要件」のインフラ整備部門では65位に低迷しており、同国の国際的評価の足を引っ張ってしまっている。
インドを始めとするアジアの新興国におけるビジネスでは、この配達網が生命線だ。しかし、交通インフラの整備は短期間ですぐにどうこうなるものでもない。そもそもインドは国土が広大で、配達網を行き届かせるのは大都市圏でさえ難しい。
だとすれば、ダッバーワーラーの土地勘に長けたスタッフのネットワークによるアナログな配達技術は、実はものすごい資産なのかもしれない。弁当配達ビジネスだけにとどまらない可能性を感じさせる。
(井上美穂 & 岡徳之 & 5時から作家塾(R))
