VWとの提携がついに解消決定
スズキが得た「重い教訓」とは?

スズキとVWの離婚騒動に学べ!<br />生き残れる自動車提携の条件VWとの提携解消が決まり「のどに小骨が引っかかっていたのが、非常にすっきりした」と会見した鈴木修会長CE0(右) Photo by Hidekazu Izumi

 それは、猛暑から一転して秋のような涼しい今夏の終わりの日曜だった。8月30日の午後3時に、スズキ東京支店広報から、「本日、お休みのところ恐縮ですが、午後4時半から緊急会見を行いますので出席願いたい」と、筆者の携帯に電話が来た。

 緊急会見会場は、スズキの鈴木修会長CE0が好んで使うホテルニューオータニだった。余談だが、このホテルはかつてスズキが米GMと資本提携を締結した際の発表記者会見も行っている。

「のどに小骨が引っかかっていたのが、非常にすっきりした」

 鈴木修会長は、社長職を譲ったばかりの長男・鈴木俊宏氏と壇上に並びながらも、この案件は会長マターであるだけに、「オサム節」で満足げにこう語った。独VWとの「離婚」がついに実現したのである。

 遡ること6年前、スズキは米GMに代わる提携先に独VWを求め、VWはグローバル戦略拡大のためにスズキを欲した。2009年9月に両社は電撃的な包括提携を締結した。両社の対等なパートナーシップを前提にスタートしたはずの提携だったが、VWの真の目的はスズキの支配だった。同社が突如スズキを持分法適用会社に位置づけてきたことに端を発し、対等関係で合意したと確信していたスズキの不信感が噴出したのだ。

 スズキはVWに対し、円満な協議を通じて提携及び資本関係を解消することを求めたが、VWがスズキの求めに応じなかったため、2011年11月に国際商業会議所国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てた。

 しかし、この仲裁裁判は異常なほど時間を要した。提訴から3年目の昨年9月にようやく調停人との仲裁行程が終わり、仲裁判断を待つばかりとなったとされた。しかし、昨年も年内中は音沙汰なしで、今年に入っても3月、6月と期限のメドとされた時期に提示がなかった。

「待てども来ないから決めた」

 鈴木修会長は株主総会を終え、6月30日に臨時取締役会を開き、トップ人事を決議して、長男・鈴木俊宏を新社長に登板させる。

 社長を長男の俊宏氏に譲っても代表取締役会長兼CEOとして「生涯現役」を謳う鈴木修氏にとって、VWとの提携解消は頭の痛い課題だった。それからちょうど2ヵ月後、実に3年9ヵ月かかったVWとの「離婚決着」で、とりあえず安堵の境地に達することができた、といったところか。