「知識社会に特有の上方への移動は高い代償をともなう。それは、競争にともなう心理的な圧力と精神的なストレスである」(『ネクスト・ソサエティ』)
ドラッカーは、われわれが今、直面している社会を知識社会(ネクスト・ソサエティ)と呼ぶ。知識社会には、3つの特徴がある。
第1に、万人に職業選択の自由がある転職可能な社会である。
第2に、万人に教育の機会が与えられるがゆえに、誰もが出世可能な社会である。
第3に、万人が知識を手に入れ、しかも、万人が勝てるわけではないがゆえに、成功と失敗が併存する社会である。
昔の社会はそうではなかった。無産者の子は、無産者であっても敗者ではなかった。ところが、知識社会では、勝者がいて敗者がいる。全員がいつまでも順風満帆というわけにはいかない。
おまけに、ほとんどの人が、長い第2の人生を持つことになった。
したがって、会社オンリーだとつらいことになる。本人のせいではない。そのような時代になったということである。
そこでドラッカーは、他のことと同様、いつから始めるにせよ、準備が必要だという。
「知識労働者たる者は、若いうちに、非競争的な生活とコミュニティをつくりあげておかなければならない。コミュニティでのボランティア活動、地元のオーケストラへの参加や、小さな町での公職など、仕事以外の関心事を育てておく必要がある」(『ネクスト・ソサエティ』)