成約率98%のベースであり営業が結果を出すために考案された『和田裕美の営業手帳』、生活と仕事を充実させながら人生の質の向上を目指す「陰山手帳」、2016年版もこれら2点の手帳がさらに進化して登場。長い年月をかけて手帳を進化させてきた著者二人が、手帳の役割について語ります。デジタル化が進むなか、「手書き」で情報を記録する意味とは?(取材・構成/両角晴香 撮影/宇佐見利明)

情報を集めるにはウェブ、
整理は手書き

和田 最近はスケジュール管理をウェブでする人が増えていますね。

陰山 何を隠そう僕も一部はウェブを利用しています。あちこちに出張に出ることが多いので、スタッフと連携を取るためにはそうせざるを得ないのですよ。オンライン上で次々と予定をアップデートしていきたいので。

和田 スケジュールだけじゃなくて、そもそも紙に書くという行為すらしなくなったという声も聞きます。

陰山 ほお。

和田 何か思いつけば携帯のメモ機能を使って、新聞や雑誌で良い記事が見つければ写メで撮る。書記はホワイトボードを写メで撮るし、取材もボイスレコーダーにデータ録音するからそれほどメモはとらないという人もいらっしゃいます。ITを駆使して、アナログ的なことをしない人が増えているのかなって。

陰山 どうだろう。デジタル派もアナログ派も両方いるように思いますね。僕は、何か考えたりするときにとにかく「書く」人です。

和田 私もそう! 基本的にメモ魔ですからね。

紙に書くことで情報が脳にインプットされる陰山英男(かげやま・ひでお)1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し脚光を浴びる。2003年4月、広島県尾道市立土堂小学校 校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やコンピュータの活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校 副校長 兼任)に就任。
現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校 校長顧問 兼任)。過去には、文部科学省・中央教育審議会 教育課程部会委員、大阪府教育委員会委員長にも就任。主な著書に、『学力は1年で伸びる! 』(朝日新聞出版)、『若き教師のための授業学』(日本標準)、『本当の学力をつける本』(文春文庫)、『陰山メソッド たったこれだけプリント』(小学館)ほか多数。

陰山 何かテーマがあって、それにまつわる情報を集めるときはウェブを活用するのだけど、それらの情報を整理するときはスクリーン上では絶対無理ですね。

和田 それはなぜ?

陰山 たとえば、新しいカメラを買うことにして自分にぴったりの商品を探すとします。人物撮りならどれが向いているかとか、カメラの性能をあれこれ調べ始めるとだいたい一週間くらいかかります。僕は凝り性なのでとことん極めないと気が済まないのですよ。

和田 陰山先生は、何でも本当にお詳しいですからね。

陰山 そうやって調べごとをしていると、インターネットエクスプローラーのタグがズラリと並ぶわけです。だから、必要なことは手書きで書き出します。

和田 うんうん。

陰山 考えるべき観点が5~6個ならいいんだけど、「画質としてはコレだよね」、「テレビで映して見るならコレだよね」と、数十個に及ぶ観点で考察しようとすると、カメラのボディは2つ、レンズは4つみたいなことになって、絞り込めなくなっちゃうのですよ。だから体系的に紙に書き出して決断するわけです。

和田 陰山先生、カメラの本が書けちゃいそうですね。

陰山 うん、ギリギリいけるかもしれないなあ。