会社をつくるなら
一度沈む覚悟がないと成功しない

独立したらすぐに会社をつくろうと思う人は意外と少なくないが、本当に会社組織化が必要か熟考する必要がある

前回より、サラリーマンからの起業について話をしているが、そもそも個人事業主と会社組織化の境目はどこにあるのだろうか。判断基準はいろいろある。人を雇うかどうか。仕入れの関係などから会社組織であることが求められるかどうか。どの程度、投資が必要かどうか。その結果、投資や融資がどの程度必要となるのか……。

 たとえば設備もほとんどいらない自分一人だけの頭脳労働であれば、投資はほとんどいらない。お金が掛からず、人も雇う必要がないとすれば、特に会社組織にする理由もない。

 大きな判断材料は、設備投資が必要かどうかだ。設備投資が必要であれば、先行投資が必要になる。そのためには銀行からお金を借りたり、事によると誰かに出資してもらったりする必要が出てくるので、会社設立が得策ということになる。

 何かモノを作ろうと思った場合は、一般的には設備投資が必要なため会社組織が必要と思うかもしれないが、一人でできる手づくりであれば個人事業で十分可能だ。ところが、手作りではなく、大量生産しようと思ったら話は変わってくる。

 最近では自分で生産設備を持たないファブレスもあるので、必ずしも先行投資が必須ということでもないが、自社でこだわりを持って作るとなると、設備も必要だし人も雇わなくてはいけない。こうなると、どうしても会社組織にすることになるだろう。

 会社組織にするということは、「一度沈む」ことだと思っている。先行投資が必要だから、どうしても一度は経済的にきつい状況となる。その沈み方が大きければ大きいほど、うまく行ったときに高い山に登れる。沈みが小さい場合は、山もたいして高くはならない。ただし、大きく沈んだからと言って、必ずしも大きく実を結ぶとは限らない。

 要するに、ハイリスク・ハイリターンなのか、ローリスク・ローリターンなのかの選択である。ハイリスクでなければ仕方ないもの、つまりは多額の設備投資が必要なものは会社組織にするのが正解だ。

 やってはいけないのは、そもそも資本集約的でも労働集約的でもない事業なのに、無駄に投資を行い、人を雇うことだ。計画性もなく人を雇う、高い家賃の場所にオフィスを構える、宣伝も打つなどを指す。事業を展開するのに必要最低限の人と設備でスタートするのが大原則だ。