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医療が危ない!

学費6年間で6000万円の医学部も!?
医療崩壊が止まらない本当の理由

井家真人
【第2回】 2010年4月22日
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 日本の医療崩壊が止まらないのは、前回見てきたとおり臨床医制度による医師不足もその1つの原因であろう。しかし、医師不足、医療費不足、医師の過重労働、救急医療体制や中核病院の閉院など、今、「医療崩壊」の原因として問題視されているものはただの“現象”に過ぎない。

“変えたくない力”による
隠蔽工作と聖域化

田島 知郎(たじま ともお)/日本外科学会特別会員、日本乳癌学会名誉会長、アジア乳癌学会名誉会長。1939年長野県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。米国テュレーン大学留学。米国外科専門医資格取得。東海大学東京病院長を経て、東海大学名誉教授。定年後の現在も外科医として手術も担当。腫瘍外科専攻、乳腺疾患の診断と治療が専門。

 「医療崩壊が止まらない根本的な原因は、日本の医業の仕組みがグローバルスタンダードでないことに気づいておきながら、“変えたくない力”が自分たちの既得権益を守ろうと、事実を隠蔽していることだ。そして、日本の医療が間に合っていない本当の理由を国民が認識できないように、上手く論点をすり替えている」と東海大学の田島知郎先生は語る。

 まず、日本の医業は勤務医と開業医が区分される仕組みで、開業医は専門医であるのに軽微な傷病の診療をし、多くは時間外診療をしていない。それに対して、米国では臨床医は全員開業医であり、病院が「オープンシステム」になっている。病院のフルタイム医師は原則として、主治医にはならない麻酔科などの医師と研修医である。

 病院の外来は主に救急であり、その他の外来は開業医自身のクリニックで行う。入院医療の必要な患者の場合は、開業医が地区の病院に入院させ、自らが主治医として診療を継続する。そして、米国の医師は地域の病院で診療特権を取得して、その病院を使って開業する。開業には高額の設備は不要なので、開業資金は安く、医療資源の私有化が少ない。そのため、米国の医師にとって病院収支は関係がなく、患者の治療に集中できるのだ。

 こうした仕組みについては、救急医療の問題などもあり、最近になって日本でも注目されつつある。例えば、開業医が病院に出向いて分娩などを行うケースなどである。こうしたケースが一般的になれば、勤務医の負担は大きく減り、医師不足にも貢献できるかもしれない。

 しかし、日本では「医業システムについて議論することがタブー視されており、国民の間で議論されていない。長年、慣れた仕組みで今さら変えることができないといった為政者や、変えると会員の権益が損なわれるといった団体の思惑が見え隠れする。また、議論になっていない最大の理由は、医療関係者が自分たちの利益を守ろうと、『モラル・ハザード医療』の実態を隠蔽していることにある」と同氏は指摘する。

「医者=経営者」の構造が
日本の医療を崩壊させる

 「モラル・ハザード医療」とは、医師が患者に対して、不必要に多くの薬や診察を行い、診療報酬を増やそうする医療行為である。例えば、鼻風邪で受診に行ったら、胸のCTや血液検査もしてくれたという経験がある人は多いのではないだろうか。

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医師不足・地域医療の崩壊など、様々な医療システムの運用が損なわれつつある現代。そうした「医療崩壊」の現状を様々な角度で紹介しながら、その原因と問題点を探っていく。

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