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イノベーション的発想を磨く

リーダーシップを発揮する前にマネジメントを始めてはならない

~『リーダーの言葉が届かない10の理由』(荻阪哲雄著)を読む

情報工場
【第3回】 2015年10月24日
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「君の仕事は、何だい?」に
清掃作業員は何と答えたか?

 トップのビジョンがすみずみまで行きわたり、一人ひとりのメンバーがそのビジョンを実践しながら、生き生きと働く理想的な組織とは――?

『リーダーの言葉が届かない10の理由』
荻阪 哲雄 著 日本経済新聞出版社
1690円(税別)

 そう考えた時に、10年ほど前に読んだ本に紹介されていた、あるブラジルの企業を思い出した。その企業は、急速に成長し3ヵ国に3000人規模の従業員を抱える大企業になったにもかかわらず、社員を管理する規則がほとんどなく、社員全員が自己管理のもと自由に伸び伸びと仕事に取り組んでいた。

 その企業のCEOが、グループ傘下の「電子はかり」の組み立て工場を訪れた時のことだ。通りかかった女性の清掃作業員に「君の仕事は、何だい?」と声をかけたそうだ。すると彼女は「わたしは、はかりを組み立てています」と答えたという。これこそが、まさに組織のすみずみにまでビジョンが浸透した理想の姿ではないか。

 彼女は、自分が担う「掃除をする」という業務が、チームの大きな目的(=はかりの組み立て)を実現するために必要な手段の一つであることをよく理解している。だからこそ、彼女は胸を張って「チームの本来の目的」を自分の仕事と言えるのだ。

 この企業では清掃作業員も含むメンバー全員が、社の業績を話し合う月次の会議に参加している。メンバー全員が自社の目指すビジョンを「自分事」とした上で日々の業務を実践することが、組織の理想的な状態を作り上げ、業績の向上にもつながるのだろう。

 数人~数十人規模の企業であれば、このような理想の状態を実現することは難しくない。トップとメンバーの距離が近く、直接顔を合わせて話す機会も多いだろうからだ。

 しかし、企業が50~200人くらいの規模に成長していくあたりで壁に突き当たる。そのぐらいの規模になると全員が顔見知りの状態ではなくなる。どこで誰が何をしているのかがわかりづらくなってくる。社内の階層が増えるためにトップとの距離も広がる。そうなると小規模の組織でうまく行っていたやり方が次第に通用しなくなる。結果、全体的に風通しが悪くなる。

 そうなってくるとトップは、組織変更、業務分掌の整理、各階層の権限明確化など、いわゆる組織マネジメントに力を入れたくなるものだ。だが、それらが功を奏することはあまりないようだ。そのような時こそ、リーダーのビジョンをもう一度明確にして、組織全体に浸透させることから始めるべきなのだ。本書にはそのための具体的な方法論が詳しく解説されている。

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浅羽登志也

情報工場シニアエディター。1989年、京都大学大学院修士課程修了後、リクルート入社。同社スーパーコンピュータ研究所にてインターネットに関する研究に従事。1992年、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に創業メンバーとして入社。インターネット黎明期からサービス開発・技術開発に携わる。IIJは、日本で最初にインターネット接続の商用サービスを開始したインターネットサービスプロバイダで2006年12月東証一部上場。1999年、IIJ取締役、2004年より2009年までIIJ取締役副社長。2008年より2015年までIIJイノベーションインスティテュート代表取締役社長。2015年7月よりIIJフェロー。情報編集にも興味を持ち、2007年より松岡正剛氏主催のイシス編集学校で松岡流編集術を学ぶ。現在イシス編集学校の師範を務める。2010年に軽井沢へ転居。自然農法で、自家用の蕎麦や大豆を栽培中。

 


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