ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
今週のキーワード 真壁昭夫

英国“中国製原子炉導入”の衝撃と
背後にあるTPPへの焦り

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第400回】 2015年10月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

英国が中国製原子炉の導入で合意
TPPから外れた両国の思惑が合致

英国と中国が急接近。背景にある事情とは…?

 10月21日、中国の習近平国家主席は英国のキャメロン首相と会談し、同国南東部で計画している原子力発電所に、中国製の原子炉を導入することで合意した。中国製の原子炉の導入は先進国では初めてであり、多くの専門家から驚きを持って受け止められた。

 当該原発プロジェクト企業には、中国広核集団(CGN)が66.5%を出資することになっており、原子炉の建設及びその後の運営までのほとんどを中国企業が担うことになる。

 それに対しては英国内から、「安全性に疑問がある」「国の根幹を担う事業分野を中国企業に任せてよいのか」などの批判的な声が上がっている。

 今回の合意の背景には、海外からの投資資金を使って国内経済の活性化を図りたい英国のキャメロン政権の思惑と、世界のインフラ投資を狙う中国の戦略が上手くマッチしたことがある。

 中国は国内に大きな過剰生産能力を抱えていることもあり、鉄鋼やセメントなどの基礎資材を海外に輸出して、国内経済を下支えすることが必要になっている。そのためには、世界のインフラ投資を着実に掴んでおきたいはずだ。

 一方、TPPの基本合意によって、環太平洋の12ヵ国が関税率の引き下げやビジネスルールの統一に動き始めた。TPPから取り残された中国としては、同様にTPPから外れている欧州諸国に近づいて、対TPPで相応のポジションを確保することが必要になる。

 その意味では、中国の意図は明確だ。見逃せないポイントは、英国やドイツなど欧州の主要国が、それを歓迎するスタンスを取っていることだ。

 今後、中国をめぐる情勢は一段と複雑化するだろう。わが国としても、世界情勢の変化に敏感に対応できる体制を作っておくことが必要だ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


今週のキーワード 真壁昭夫

経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。

「今週のキーワード 真壁昭夫」

⇒バックナンバー一覧