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橋下徹の維新の党批判に学ぶ「伝え方の極意」(下)

政治ジャーナリスト・松井雅博

松井雅博 [政治ジャーナリスト]
2015年10月27日
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>>(上)より続く

 だが、短い言葉は逆に「舌足らず」になることもある。橋下徹市長も今回は極めて強い言いっぷりで、批判のトーンを強めた。

 「日本一頭の悪い政治家である柿沢氏」
 「民主党から逃げてきた幹事長と名乗る今井という男」
 「維新の党の国会議員はへなちょこでダメだな」
 「維新の党の国会議院はほんと早く日本から消えてもらわなければならない」
 「維新の党、終了」
 「維新の党のバカども国会議員は全くだめだ」

 これらの言葉の破壊力はすさまじい。確かに、維新の党に対する対決姿勢は強く伝わったものの、「バカ」と言われて素直に納得できる人は少ないだろう。「1+1=2だよ、バカ」と言われて、「なるほど、そうだったんですね」と素直にうなずくバカはいない。短く表現することは大切だが、その際には率直すぎて相手の感情を逆なでしていないか、副作用も考えないといけない。

批判の対象は維新執行部でも
本当に意識しているのは有権者

 2つめが、「聞き手が誰かを明確にせよ」ということである。橋下徹市長は常に「有権者」に向けて語っている。正直、今回の内紛劇における維新の党に対する批判も、おそらく橋下徹市長は維新の党の国会議員に向けて書いているように見せて、実はTwitterを読む有権者に向けて書いている。橋下徹市長の言説は、一貫して有権者を向いている。たとえば前述の「バカ」というきつい表現も、相手にとっては受け入れがたい言葉だが、端で見ている人々からすれば、実にわかりやすい言葉だ。この点からも、橋下市長が常に有権者を聞き手に設定していることがわかる。この発言を見た橋下ファンからすれば、攻撃対象が明確になり、さぞスカッとすることだろう。

 ただ、今回の場合、この橋下徹市長の言葉を受け取った一般の有権者としては、結局どうしていいのかわからない。これが政権与党に対する攻撃なら、次の選挙での政権選択を求められているのだろうと察するが、そもそもが「内ゲバ」にすぎないのに、相手に対する罵詈雑言を堂々と外へ伝えられても困ってしまう。本来内部で話し合い処理すべきことを外部に伝えてしまったために、かえって独善的な印象を与えてしまった面も否めない。聴き手が誰かを考えることは大事だが、そもそもそれを聞かせるべき内容かどうか、についても吟味が必要だ。

 そして3つ目は、「大事なことは何度も伝えよ」ということ。もし、世の中の人が一度言ったことをすべて理解できるなら、学校のテストの成績はみんな100点しかとらないはずだ。筆者がビジネスの世界でももっと取り入れるべきだと感じている、政治の世界での風習が1つある。それは、何度でも名前を言う文化である。

 政治は「自分の名前を憶えてもらってなんぼ」の世界である。だから、人に会うたびに自分の名前をフルネームではっきりと伝える。筆者の経験上、ビジネスの世界では最初に名刺交換をするものだが、その後改めて自分の名前を言う人は少ない。一度名刺交換をしたからと言って、覚えてもらえると思うのは間違いである。相手に本気で伝えたいなら、何度でも同じことを伝えるべきだ。

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松井雅博[政治ジャーナリスト]

まつい・まさひろ/1979年6月14日生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。工学・教育学の2つの修士号を持つ。国家公務員1種法律職試験合格(政策秘書資格取得)。国連英検A級。マッキンゼーアンドカンパニーなどグローバル企業での勤務を経て、国会議員政策担当秘書として政界へ飛び込む。35歳の若さで、第47回衆議院議員選挙に兵庫10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)より出馬し、5万1316票を獲得するも落選。一民間人の感覚で政治の現場や裏側を見た経験を活かし、これまでブラックボックスだった政治の世界をできる限りわかりやすく面白く伝えることに情熱を燃やす。


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