長引く不況の影響で、「椅子取りゲーム」のような社会状況から、弾き飛ばされる人たちが増えている。
いくら頑張っても、社会に参加できない。ようやく就職できたとしても、その会社は、劣悪な雇用環境や人間関係の問題を抱えていたりしていて、なかなか長続きできずにいる。
とくに、生きづらさを抱え、一旦、社会から離脱したような引きこもる人たちにとっては、こうした職場に自分を合わせていかなければいけないことが、社会に戻っていく上での大きな壁になっているのが実態だ。
そこで今、「雇う、雇われる」という雇用関係ではなく、「みんなで出資して、みんなで経営し、みんなで働く」ことによって、「収益もみんなで均等に分配する」協同労働という新しい働き方が、注目されている。
そんな期待の高まりを裏付けるように、5月9日、千葉県の市川市市民会館大ホールで開かれた「協同労働の協同組合法制化記念フォーラム」には、客席数を超える1000人余りが詰めかけ、会場は熱気に包まれた。本コラム第16回で紹介したように、小澤さんのいるワーカーズコープ(日本労働者協同組合)などが呼びかけたフォーラムだ。
職場のあり方を人に合わせれば
ハンディのある人も働ける
22年間にわたって「不登校・引きこもり」親の会の活動を続けてきた下村小夜子さんも、こうした新しい働き方に共鳴。同じように「引きこもり」の子供を持つ親の会の仲間3人で構想を練って、千葉県佐倉市に協同組合「ワーカーズコレクティブ風車」を立ち上げた。イベントやパーティーなどのとき、大量に使い捨てられる紙容器ではなく、プラスチックのリユース食器を格安で貸し出し、返却後に洗浄、滅菌して、繰り返しレンタルする事業だ。
風車のメンバーは現在、15人ほど。「引きこもり」の家族や当事者、ハンディのある人たちなどの関係者が中心だ。
メンバーの平均賃金は、一律「時給200円」。ただ、CO2を大幅に削減できるという地球に優しいビジネスであり、大口の需要も増えているという。設備などの初期投資がほぼ終了し、軌道に乗り始めれば、収益も着実に上がるものと見込まれている。