数ヵ月前くらいだろうか、facebookのタイムラインに、「グリシン」(サプリメント)の広告が何度も表示される時期があった。読者の中にも、最近、あちらこちらのサイトで「グリシン」を目にしている、という方も少なくないのではないだろうか。そこで今回は、このあまり聞き慣れない「グリシン」を巡るあれこれを考えてみたい。
まず、「グリシン」とはどんな化合物なのか? と言えば、タンパク質の構成要素となる20種類のアミノ酸の中で、構造が最も単純な(したがって分子が最も小さい)非必須アミノ酸が「グリシン(H2NCH2COOH)」である。
そして、この最も単純で、かつヒトの体内で合成可能でもあるアミノ酸、グリシンが、睡眠の質を高めてくれる効用があるとして、注目されているようなのだ。
ここで睡眠の話に移る前に、グリシンが生体内でどのように利用されているのか、その主な役割を簡単に整理しておいたほうがよいだろう。
1. コラーゲンを構成するアミノ酸の3分の1をグリシンが占める。
2. ヘモグロビンやミオグロビンなどの骨格となるヘムの原料となる。
3. 最も重要な細胞性抗酸化物質であり、解毒作用も有するグルタチオンの原料となる。
4. 筋肉中に貯蔵され、エネルギー源として利用されるクレアチンの原料となる。
グリシン自身も体内で合成される非必須アミノ酸の一つであるが、上記のように、ヒトが生きていく上で欠かせない重要な物質の原料となっている。
就寝2時間前のグリシンが
早く深い眠りに誘う
以上で見てきたように、グリシンは栄養素として非常に重要であることに間違いはないが、睡眠の質を高めてくれる効用もあることが分かってきている。
味の素社の関連組織である「いきいき健康研究所」のWebサイト内に「学術情報」というコーナーがあり、各学会で発表された内容(要約)を閲覧することができる。
これらの学術情報によれば、グリシンを(積極的に)摂取することにより、大きく2つの効能を期待できることが分かる(個人差があるので、あくまで“期待”)。