会社で圧倒的な実績を上げている人がいるとする。その人は、そのまま会社にとどまっていれば、かなりの確率で出世することができるだろう。現に、一定の役職を得ているケースもあるかもしれない。
…それでも、ある日突然、その人は別の会社に転職してしまう。

あなたのまわりでもこんなケースはないだろうか?
こうした事態がよく起きる背景には、ビジネスという戦場に横たわっている「普遍的なメカニズム」がある。

野茂英雄投手がメジャーリーグに入った理由

元メジャーリーガーの野茂英雄(のも・ひでお)投手を例に説明しよう。

プロ野球で活躍する以前、彼は「新日鉄堺」という実業団のチームに所属していた。当時、アマチュアの選手たちは、プロ級の剛速球と鋭く落ちるフォークを武器としていた野茂投手をまったく打ち崩せなかった。
バッターたちからすれば、完全なお手上げ状態であり、野茂投手は三振の山を積み上げたのである。

当然ながら、野茂投手にはプロ野球の世界からも声がかかった。近鉄バファローズ(当時)に入団してからも彼の実力は突出しており、なんと新人の年から4年連続で最多奪三振、最多勝利のタイトルを獲得。
ここでもやはり、多くのプロ選手が「まいった」という状態だった。

このように、競合の「まいった」をあまりに多く引き出してしまうプレーヤーは、より上位の戦場に移ることになる。
つまり「潜在的なパフォーマンスレベル」が同程度のプレーヤーが集まる場所を選択するものなのだ。

実際、野茂投手も日本のプロ野球を飛び出して、よりレベルが高いとされるアメリカのメジャーリーグに挑戦した。